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世界観コラム ─ 解説!惑星クレイ史
第6章

弐神紀中期 ~弐神戦争と神格「破壊神ギーゼ」の封印~

中村聡

◆破壊の竜神

絶望の引き金を引いたのは、ダークゾーンの若き魔王だった。

創世神メサイアがもたらした新たな加護「魔法」により、世界中が繁栄に沸いていた時代。世界中で最も高い魔力が集まる国ダークゾーンでは、魔力に秀で魔王と呼ばれる者たちが覇を争っていた。

若く、野心に溢れた魔王がいた。名をガスティールという。彼は他を圧倒する力を求めて研究を重ね、ある重大な事実にたどり着いた。創世神メサイアは、魔法という希望をもたらしたが、同時に絶望を生み出した。すなわち、世界の法則を大きく塗り替えたために、世界を歪め、かつてないほど巨大な虚無が目前まで近づいているという事実に。

「それ」は無限の力を秘めていた。世界そのものと言える創世神メサイアすら超える圧倒的な力。ガスティールは「それ」に魅せられてしまった。力こそ全て。魔王として、誰よりも強い力を求め続けてきた彼は、「それ」を召喚することを決意する。おそらく世界は滅びるだろう。素晴らしい。それほどの力が得られるならば、なんと些細な代償だろうか。

不幸にしてガスティールは天才だった。彼は邪神司教を名乗り、「それ」の召喚に成功してしまう。すなわち、創世神メサイアと対をなす滅亡の神格「破壊神ギーゼ」の降臨である。


◆ギーゼの使徒

ギーゼが目覚めた時、それを感知し、誰よりも早く討伐の決意をした英雄がいた。絶対正義を掲げる海の守護者、アクアフォースの初代元帥ヴァレオスである。彼はアクアフォースを率いて戦いを挑み、そして敗北した。

ヴァレオスは稀代の英雄であった。彼はあまりにも強く、優秀であったが故に、ギーゼを完全に「理解してしまった」。破壊神ギーゼは虚無の化身であり、無限の力と可能性を秘めている。世界は虚無から生まれ、虚無に還ることこそが自然である。ならば、ギーゼのもたらす世界の滅亡こそが「絶対正義」である。以後、ヴァレオスはギーゼに忠誠を捧げた。

ヴァレオスと正反対の信条を持つ実力者がいた。犯罪結社メガコロニーの女首領グレドーラである。彼女は、ギーゼを「自分の可愛い子供たち」の縄張りを増やすために都合の良い存在と考えた。世界が滅びれば、その後、無人の大地を子供たちで埋め尽くせばいい。


こうして、ガスティール、ヴァレオス、グレドーラという強力な使徒を得た破壊神ギーゼは、世界の滅亡に着手する。神格としての力をクレイエレメンタルに注ぎこみ、自らの分身とも言える生ける災厄、6体のゼロスドラゴンを産み出したのである。


◆不滅の聖剣

後に「弐神戦争」と呼ばれる戦乱は、一方的な蹂躙で始まった。ギーゼの軍勢とゼロスドラゴンは、世界各地で天災が如き被害を引き起こしたのだ。各国は威信を賭けて抵抗を試みるも失敗。町や村、小国すらも破壊し尽くされ、人々の間に絶望が広がっていった。

この頃、サンクチュアリ地方に1人の若き騎士がいた。名をフィデスという。彼は人々を守る為に戦いながらも、自らの無力さに苦しんでいた。ある日、彼の前にゼノンと名乗る賢者が現れる(※)。彼の導きに従い試練を乗り越えた彼は、聖域の奥深くでそれまで誰も抜くことができなかった聖剣を手にする。

(※) 導きの賢者 ゼノン:以後、幾度となく歴史に姿を現し、その時代の英雄を導く賢者。


聖剣の力を振るい、人々を守る彼の元に、国境を越えて志高い騎士達が集った。やがて人々を守る騎士たちは「ロイヤルパラディン」と呼ばれ、人々の希望となった。

同じ頃、他にも国境を越えて活躍する集団があった。世界各地で傷つき苦しむ人々の治療に尽力するエンジェルたちである。どれほど危険な場所であろうと駆けつけ、戦場では陣営に拘ることなく治療するこの集団が、「エンジェルフェザー」と呼ばれる医療クランとなる。

2つのクランの活躍は、絶望に喘いでいたサンクチュアリ地方の人々に希望の火を灯した。聖域各地にギーゼの使徒やゼロスドラゴンに立ち向かう勢力が増え、その動きは世界中に広がっていった。そして、世界は滅亡の淵で踏みとどまり、抵抗を開始したのである。

◆神格の封印

人々の必死の抵抗により、戦線は膠着。弐神戦争は長期化した。この時期に、各地でギーゼの軍勢に抵抗するための研究が行われ、軍事面での魔法技術が大幅に進化したようだ。

そして、メサイアの加護を受けた各国・各クランが共闘。ギーゼの軍勢との最終決戦となり、メサイアの陣営が勝利した。

しかし、ギーゼの力はあまりにも強く、完全に滅ぼすことはできなかった。そのため、メサイア自らがその力のほとんどをそそぎこみ、ギーゼの陣営を様々な形で封印している。

まず、ギーゼ軍の中核となったアクアフォースが、時空の狭間に封印された。また、ギーゼの分身ともいえる6体のゼロスドラゴンは、ギーゼと切り離すために、英雄フィデスが自身と共に「重なり合う世界」へと転移して封印したと記録されている。そして、ギーゼ本体はメサイア自らが惑星クレイの南極に封印した。なお、3人のギーゼの使徒は行方不明となり、終戦後の記録は残されていない。

これらメサイアによる干渉の影響は大きかった。重なり合う2つの世界の距離はさらに縮まり、互いの運命はさらに強く絡み合ってしまう。そして、メサイアはその力のほとんどを使い切り、長期に渡る休眠状態に入る。これが、弐神戦争と呼ばれる長き戦乱の顛末である。

本書をここまで読み進めてきた読者ならば、神格の休眠が世界に何をもたらすかは容易に想像していただけるだろう。次章は、その影響が明らかとなる弐神紀後期の様子を解説する。

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