◆終戦からの復興
弐神戦争の終戦は、惑星クレイに様々な影響を及ぼした。最も大きな影響を受けたのは、海域を支配するメガラニカである。
海の治安を支えていた海軍クラン「アクアフォース」が封印されたことにより、海賊クラン「グランブルー」が再び猛威を振るい始める。幾つもの強力な海賊団が台頭し、七つの海の覇権を競って争ったようだ。
その後、最有力の海賊団のいくつかが連名で、メガラニカ政府と協定を締結した記録がある。その協定は、縄張り、裁判権、海洋魔物討伐への協力、遭難時の互助、港湾の使用権等を定めており、アクアフォース不在のこの時代に、一部の海賊団がメガラニカ政府公認の海域治安維持組織兼、他国に対する私掠部隊の性格を併せ持ったことを示している。
海域の治安が安定したことで、海洋貿易や海外旅行が活性化していった。そしてその頃、バミューダ海域のマーメイドの歌姫たちが、世界的な人気を獲得している。後に「バミューダ△」と呼ばれる彼女たちの公演は空前のプラチナチケットとなり、「ライブの日には銃声が消える」と言われるほどの人気を博したようだ。
さて、視点を別の大陸に移してみよう。科学文明の中心であり、資源の枯渇に最も苦しんでいた南極大陸でも、大きな変化が起こっていた。
魔法という新たなエネルギー源に複数の星間文明が着目。惑星クレイへの介入権を巡って争い、あやうく宇宙戦争の瀬戸際になっていた。その後、開戦寸前で「ディメンジョンポリス」が仲裁に成功、各星系が交渉のテーブルに着いた。その会議で如何なる駆け引きがなされたか定かではないが、何故か「ノヴァグラップルで決着をつける」ことになったようだ。そして、優勝した王者(チャンピオン)の宣言により、スターゲートが建国されている。
この時期に興った国がもう1つある。魔王たちの国ダークゾーンである。そもそも、魔王の1人であるガスティールがギーゼを顕現させた後も、他の魔王たちは追随することなく独自路線を貫いた。そして、共通の敵が封印された後は、当然に魔王同士の抗争を継続した。しかし、弐神戦争時代に軍事魔法が劇的に強化された結果、抗争の被害が激増。ついに、魔王たちの間で協定が結ばれ、ダークゾーン建国に至ったようだ。
その後、魔王同士の戦争という娯楽を失った彼らは、それぞれの趣味に全力で走りだしたようだ。ある魔王は、永遠に続く夜の宴を開催し、宴を盛り上げる者たちを大いに支援した。後に世界的に有名となった真夜中のサーカス団「ペイルムーン」がその代表格である。
また、直接的な戦争の代替とするかのように、幾人かの魔王はスポーツの勝敗にのめりこんだようだ。その1つが、武装球技ギャロウズボールである。後に国境を越えた人気を博したその球技では「スパイクブラザーズ」というチームが有名である。
◆次元の扉
終戦による変化はこれら正の要素だけではなかった。かつて「創世神メサイア」が魔法をもたらすために生まれた世界の歪みから「破壊神ギーゼ」が生まれた。そして、歪みを集約していた「ギーゼ」は封印され、歪みを抑えていた「メサイア」は力尽き眠りについてしまった。その結果、歪みは新たな形で世界中に散り、広がったのである。
運命力(デザインフォース)を使い果たした世界は、生まれた頃のようにもろく、不安定になっていた。世界の歪みは「次元の扉」と呼ばれる穴となり、世界中に空いた穴から虚無の眷属が溢れ出した。各国・各クランの英雄が、次元魔獣(ユビキタスオーガ)と呼ばれたそれらを討伐し、次元の扉を封じることでそれに対抗する。だが、それは巨大地震の前に頻発する小さな地震のような現象にすぎなかった。
次章では、大いなる危機に瀕した人々の「祈り」が、「重なり合う世界」に届く時代を解説する。それは、3人の英雄が織りなす「始まりの物語」である。