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世界観コラム ─ 解説!惑星クレイ史
第9章

聖竜紀中期 ~時空混戦と解放戦争~

中村聡

◆時空混戦

神格「守護聖竜」がイデアに還った隙を突き、虚無は新たな形で干渉を開始する。2つの世界の運命力(デザインフォース)を有する「重なり合う世界」の特異性……「祈り聞く者」の存在そのものを利用したのである。

時空の狭間に封印されたアクアフォースの英雄には、相反する想いが渦巻いていた。掲げてきた絶対正義への純粋な誇り。初代元帥への敬意。軍人として、命令する者命令される者としての在るべき姿。そして、ついてきてくれた部下たちを封印に巻き込んだことへの高まり続ける悔恨の念。彼の想いは祈りとなり、重なり合う世界の少年に届いた。



虚無は、その想いを歪め、利用する。彼らは「率いてきた者たちに自由と安住の地を与える」ことを代価に、虚無に染められてしまったのだ。虚無は二重の運命力を操り、アクアフォースを解放。さらには、世界滅亡への最大の障害、3英雄(ブラスター・ブレード、ブラスター・ダーク、ドラゴニック・オーバーロード)とそのクランを時空の狭間に封印した(※)。

(※) 弐神戦争終了時、虚無がアクアフォースを封印したという説が存在する。いつの日か、彼らを利用し、時空混戦をもたらすために。本書では、解放時点でまだギーゼが封印されていることから、メサイアによる封印説を採用している。

時空の狭間への封印は、歴史や人々の記憶から存在を抹消されるに等しい。世界を滅亡から救った3英雄と、共に戦った3クランを失った世界は、理由も知れぬ不安と混乱に苛まれることになった。列国は、些細なきっかけから、衝突を繰り返し、それを戒めるべき強国ユナイテッドサンクチュアリやドラゴンエンパイアは力の喪失に喘いでいた。


また同じ頃、宇宙空間でも大きな危機が発生していた。数多の星系を危機に陥れる非常に強力な宇宙怪獣が現れ、全星系が協力して対応したという記録が残っている。



そして、各国が不安と混乱に苦しむ中、満を持してアクアフォースが侵攻を開始する。

◆解放戦争

対魔獣戦線の中核を担った2大国の弱体化の影響は大きく、アクアフォースは破竹の勢いで6国家の軍勢を打ち破っていった。

神聖王国が蹂躙され国土が荒れ果てた頃、民衆を守るために立ち上がった集団があった。彼らの出自は様々であった。光の騎士あるいは影の騎士の系譜を継ぐ者もいた。だがその多くが、家族や仲間を守るために立ち上がったごく普通の民衆の出自であった。

彼らは言う。英雄は確かにいたのだと(※)。理由すらわからない不安や喪失感に苦しむのはよくわかる。だが、希望は自分たちの中にある。民衆の1人1人は英雄足りえなくとも、皆が立ち上がり力を合わせれば、必ずや希望は戻ってくると。

封印された英雄の解放を旗印に掲げた彼らの元に、次々と同じ志を持つ者が集まり、クラン「ゴールドパラディン」が結成された。そして、黄金騎士団の志は世界中に広がり、この戦いは「解放戦争」と呼ばれるようになる。

(※) 黄金騎士団がなぜ封印された英雄の記憶を保持していたのかは明らかになっていない。興味深い事実として、彼らの中心となった英雄エイゼルの記録が不自然に少ないことを指摘しておく。筆者は、何らかの意図により情報が秘匿されている可能性があると考えている。

同時期、英雄と主力部隊である「かげろう」を封印されたドラゴンエンパイアは、その事態に速やかに対応している。サンダードラゴンを主軸とした遊撃部隊「なるかみ」を設立し、黙示録の竜と並び称される英雄を先頭に、アクアフォースの侵攻を見事に押しとどめたのである。


◆限界を超えて(リミットブレイク)

ゴールドパラディンとなるかみの結成は解放戦争の流れを大きく変えた。各国・各クランの英雄が協力することで、アクアフォースの猛攻に対抗し始めたのである。



そしてついに、ゴールドパラディンを中心とした連合軍とアクアフォースの間で、最終決戦が行われる。その時、幾人もの「祈り聞く者」が運命に関わり、その選択が結末に大きく影響を与えたと言われている。



最終決戦は、連合軍側が勝利した。虚無の干渉によって歪められた時空と運命力(デザインフォース)の流れは正常化され、3英雄とそのクランは封印から解き放たれた。この功績を称え、騎士王アルフレッドは、ゴールドパラディンを正規軍の一角として受け入れている。なおこの時、黄金騎士の幾人かはそれを辞退し、人々と共にあることを選択したという。

終戦後、虚無の浸食から解放されたアクアフォースもまた、クレイの人々の記憶に帰ってきた。メイルストロームを中心とした彼らは、ギーゼの使徒となった初代元帥ヴァレオスの過ち、そして、虚無の浸食により自らがなした過ちを認めた上で真摯な行動を積み重ねていく。そして長き時を経て、海の治安と正義を守護する誇り高き存在として惑星クレイの人々に認められていった。



虚無の干渉は一旦打ち払われた。しかしながら、それを招いた運命力(デザインフォース)の消耗と神格の不在は解決されておらず、世界はまだ不安定なままであった。ここに至り、虚無はこれまでに無い直接的な干渉を選択する。

次章は、異世界からの侵略者との戦い「星輝大戦」について解説する。

>>第10章