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世界観コラム ─ 解説!惑星クレイ史
第10章

聖竜紀後期Ⅰ ~星輝大戦とЯ(リバース)パンデミック~

中村聡

ある世界が虚無に呑まれた。だが、その世界はとても強く、ただ虚無に溶けることはなかった。虚無の力を取り込み、虚無の剣として生き残り、他の世界を侵略し始めたのだ。世界を次々と呪縛(ロック)して呑みこみ、進化し続ける侵略者。その名をリンクジョーカーという。

◆異世界からの侵略者(スターベイダー)

オラクルシンクタンクは新たな危機の警告を発した。全世界規模での対策を必須とする侵略者の予見。2大軍事大国を中心に各国は警告を重く受け止め、対策に全力を上げた。

ユナイテッドサンクチュアリでは、独自に危機を察知していたブラスター・ダークの提言により、シャドウパラディンに「撃退者(リベンジャー)」が編成された(※)。続いて、ロイヤルパラディンが「宝石騎士(ジュエルナイト)」を、ゴールドパラディンが「解放者(リベレイター)」を編成。この時、アルフレッドは黄金騎士を指揮し、前線に立つことを宣言している。また、異世界勢力の予知・分析を任とする特別対策組織として複合企業「ジェネシス」が設立された。

(※) ある記録によると、撃退者の指揮官モルドレッドは、ドラグルーラーと呼ばれる真の姿を持つという。その姿は、光と闇の抗争の際、2つに分かたれたファントム・ブラスターの魂の1つ「守護聖竜の化身としての善なる魂」を継ぐ証だとされている。

ドラゴンエンパイアでは、「なるかみ」に新設された部隊「抹消者(イレイザー)」が主戦を任されている(※1)。「かげろう」ではマグナプリズンから封竜の一部が解放され(※2)、「たちかぜ」では発掘された化石の遺伝子情報から「古代竜」が復活。さらには、ついに復興した「ぬばたま」も「修羅忍竜」を投入する準備を整えた。

(※1) かつて神格の化身ファントム・ブラスターと戦うために、「終末を呼ぶ禁忌の力」を使用した黙示録の竜は、いつ果てるとも知れぬ眠りについた。そして、時の狭間から解放されてなお、眠り続けているという。時の皇帝は、新たな危機を任せるに足る俊英として、抹消者の指揮官ディセンダントに「黙示録の剣」の片翼を授けたと記録されている。

(※2) 帝国の長い歴史において、マグナプリズンには様々な竜が投獄されてきた。「世界を救う竜」とも「世界を滅ぼす竜」とも呼ばれるクロスオリジンを始めとし、封竜には余りにも強力で危険な個体が多く、歴戦の老将がこぞってその解放に反対したとの記録がある。



「祈り聞く者」とのリンクが幾重にも重なり、世界に集まる運命力(デザインフォース)はついに臨界を越えた。異世界からの侵略者・星輝兵(スターベイダー)の襲来。星輝大戦と呼ばれる対異世界戦争の開戦である。

◆英雄は虚ろに染まる

リンクジョーカーは異世界侵略に特化して進化し続けてきた軍勢である。進化の末に、彼らは侵略する世界の法則を歪め、無力化する力を手に入れた。その力を呪縛(ロック)という。

解放戦線を乗り越え、万全の準備を整えて立ち向かった英雄たちすら、呪縛(ロック)の前に次々と倒れていった。しかも被害は覚悟していた以上に甚大だった。傷つき倒れた英雄達は、虚無のエネルギーの影響によって存在を書き換えられ、虚無の尖兵へと変貌……Я(リバース)していったのである(※)。



(※) 地球に直接的な影響のあった事象のひとつ。Яパンデミック事件を参照のこと。

星輝兵は世界を侵略し、その世界の強き個体をЯ(リバース)して取り込み、より強い集団に進化し続けてきた。かつての意志や感情を失い、任務を果たすためだけの存在に生まれ変わり増殖していく星輝兵たち。やがて、無数の星輝兵の中から、ある異常個体が誕生した。

その異常個体は、「世界の侵略」という任務よりも、「希望にすがる者が絶望する姿を楽しむ」という自身の嗜好を優先した。彼は仲間にすら理解されず、「道化」と忌み嫌われながら、圧倒的な強さと情熱をもって、無数の世界に絶望をばら撒き続けた

彼は今幸せだった。惑星クレイは、最高に魅力的な遊び場だった。彼はかつてないほどの愉悦の中で、至福の宴を楽しんでいた。最高の宴は、最高のフィナーレを迎えるべきだ。彼はЯ時に発生する負のエネルギーを集めて、最終兵器(おもちゃ)を創り出した。



それでもなお、英雄たちの心は折れなかった。仲間が次々とЯ(リバース)されても諦めず、1人ずつ戦友を解呪(アンロック)して戦況を覆した。そしてついには、「世界の全てを永遠に呪縛(Ωロック)」する力を秘めたグレンディオスをも打ち破ったのである。残念ながらこの時、道化師と呼ばれる異常個体の討伐は確認されていない。



最後に立ちはだかった敵は、リンクジョーカーではなく、惑星クレイ屈指の英雄であった。開戦当初、リンクジョーカーは強い運命力(デザインフォース)を持つ個体をЯ(リバース)の目標と定めた。そして、帝国の奥深くに攻め込み、眠り続けていた黙示録の竜の肉体を確保し、その反転に成功していたのだ。しかし、虚無の力を得て再誕(リバース)した彼は、カオスブレイカーにすら従わなかった。彼の目的は最強の証明のみであり、自らが認める英雄たちとの決戦を望んだのである。



決戦を経て、黙示録の竜は虚無の呪いから解き放たれた。これにより、リンクジョーカーの最初の目論見はすべて打ち砕かれたことになる。英雄たちは各地に残るリンクジョーカーの影響の解呪(アンロック)に努め、世界は平穏を取り戻していった。

だが、ここまでの戦いすら星輝大戦の序章である。次章はリンクジョーカーの新たな侵攻について解説する。

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