ユニット
Unit
短編小説「ユニットストーリー」
「楽団長、聴かせて頂いてもよろしいかしら?」
「喜んで。そちらへどうぞ」
僕は恭しく彼女を珊瑚棚の特等席に導いた。初めて見る顔だ。
今日の観客は一人。いつもは沢山同僚が詰めかけるのだけど、今は非番が少ない時間なのかもしれない。
僕らストイケイア海軍「アクアフォース」の階級はその装備や軍帽でひと目でわかるようになっているが、彼女は少し変わっていた。鮮やかな赤い瞳とエメラルドグリーンの海水になびく薄青色の髪の女性士官は僕と同級。だけど階級だけでは図れない不思議な雰囲気が漂っている。いずれにしてもこれほど美しい人を聴衆に迎えられるのは演奏者として光栄だ。
僕は指揮棒を取り出すと海中の樹に向かって構えた。
周囲の海が静まりかえる。これから起こることを予感して息を潜めるように。
さぁ、心躍る時間の始まりだ。
ドラゴニア海南部、旧メガラニカ。サイトM管轄海域。
ここに「トエルプ島の海中世界樹」がある。
僕、フロート・アサルトは「海中の軍楽隊」を率いる楽団長だ。
世界樹は惑星クレイに幾つもあるけれど、海の中に生えているのは(少なくとも僕は)他に知らない。
植物の中でも「惑星の生命に直結し、地上の生き物たちの活力を伝える」という特別な力をもつのが、世界樹。その世界樹も単独で生きていけるわけではなく、常に僕ら地上の住民が力づけ、励まさなくてはやがて枯れてしまう。その手段こそが……
『音楽。僕ら海の仲間から贈る舞台演奏だ』
僕の振るう指揮棒が海水に黄緑色の軌跡を曳く。これこそアクアフォースの海兵である証。
僕らはアクアロイド。水に魔力を加える事で作られた海の戦士だ。
Illust:沖路
序曲は定番の『演習行進曲』。
指揮棒が刻む軽快なリズムに最初に合流してきたのがイカの群れだ。
海水を捲いて伸縮する彼らが放つ音は、楽器で言うとトランペットといった所。
僕は彼らに頷きながら天上(水面)方向に顔を向けた。小魚が球形群を形成し始めている。
渦巻く魚たちが奏でるのはスネアドラム(小太鼓)。
強い潮流とサンゴが響かせるのはシロフォン(木琴)。
もうおわかりだろう。
僕が指揮棒を振るう「海中の軍楽隊」の演奏者は海の仲間たち、海に棲む生き物たちが奏でる音楽隊なのだ。
地上では、同じストイケイアの音楽隊がバイオロイドと動物たち、竜で構成されるように、僕はただ一人で指揮棒を振るうわけじゃない。陸に棲む動物たちではほぼ不可能な海中の音楽と演舞を、アクアロイドである僕と海の生き物たちが奏でるのだ。
次は『アクアフォース軍歌』。
弐神紀、アクアフォースがまだ今のような規模でなかった頃から歌われている名曲だ。
勇壮な曲調に合わせるかのように、僕の背後に巨大な影が降りてきた。
この海域を常に周遊・監視してくれている友、《深き潮流の鯨》だ。
──!
鯨が奏でる圧倒的な低音はまるで管楽器だ。
“乗ってきた!”
僕の共感能力は噂に聞く満開の大行進リアノーンほどではないと自覚している。それでも、目の前に直立する海中樹、「トエルプ島の海中世界樹」が共鳴しているのは感じられる。樹と僕らと音楽が一体になる感覚。
僕が何より満足感を得られる瞬間だ。
観客の彼女、女性士官も目を閉じて僕らの音楽に聴き入っているようだった。
海中を埋め尽くす音楽の中、くつろいだ様子の美しき女性士官は実に絵になる姿だった。
今日は『絶対正義のテーマ』で締めにしよう。
僕は「海中の軍楽隊」全隊に呼びかけるべく、両手と指揮棒を広げた。
その時──。
……×……×……×× ××× ××
「うっ!」
僕は思わず耳を押さえた。雑音というには控えめすぎるそれは“悪意”の塊のようなものだった。
不快な音がこの場に迫っている。それはひどく汚れていて邪悪で畏怖を伴った、“何か”……。
「樹の前まで下がって!」
Illust:麻谷知世
凜とした声が海水を震わせた。
僕が目を見開くと、あの女性士官は水中推進を全開にして剣を鞘走らせそれに向かって行く所だった。
黄緑色に輝く大剣。
言うまでもない。彼女もアクアロイド。しかもその剣筋は……。
背後に広がる海をいっぱいに埋め尽くし、迫りくる黒い“悪意”たちはまるで──僕にも親しい友人がいるのでこの表現は使いたくないが──小型の人魚のような形をしていた。もちろん本物の人魚の美しさにはほど遠い、それはひどく醜悪で、さらに質の悪いことに世界樹に捧げる音楽を台無しにする“雑音”を放っていた。
「絶対正義の名において!」
彼女の裂帛の気合いと共に、ひと薙ぎで先頭集団の半分が、返す二の太刀でもう半分を消滅させた。
何という切れ味!
僕は舌を巻いた。
ハイドロエンジンが内蔵された僕らの武器には、不死の海賊団グランブルーのゾンビどもも浄化し清浄な海へと戻す力を秘めている。あの“悪意”にもどうやら有効なようで僕は安堵した。
しかし……。
大ぶりな攻撃はどうしても隙を呼ぶ。もちろん彼女はそれを覚悟して、突撃し敵全軍の約半数を消し去ったのだ。
「!」
後続の“悪意”たちが彼女を押し包もうとした。
アクアフォースの海兵は死を恐れることがない。アクアロイドである彼女もまた機能が停止するその瞬間まで敵を見つめ、挑む剣を下ろすことはないだろう。
その時──。
ボボボボ・ボ・ボン!
浮遊機雷が黄緑色の水泡をあげて、“悪意”を吹き飛ばした。
「援護する!」
僕は俊足の彼女にようやく追いついた浮遊機雷を遠隔操作して、女性士官の周囲に素早く防御陣を展開した。
演奏時にはベースとなる音楽を水中に流すこの機器は、戦闘となれば文字通り、爆圧で敵を蹴散らす僕の頼もしい攻防一体の武具となる。
「来なさい!」
女性士官は敵に挑む気合いを入れ、また剣を一閃させた。
今度は彼女の背中も周囲も僕と浮遊機雷に守られている。形勢は持ち直していた。
“フロート・アサルトより司令部。トエルプ島の海中世界樹に敵襲あり。数多数。既存の海の生物との適合なし。“悪意”と仮称。増援求む”
僕は司令部のあるサイトMのC6ISRにリンクしながら、敵に向かって突進した。
彼女は前線しているが、敵の数はあまりに多い。……間に合うのか。
僕もまた死を覚悟して水中を駆けた。誇り高きアクアフォース海兵として。今はたった二人の軍隊だったとしても。
“司令部了解。2秒後に後方より斉射。射線上から速やかに回避せよ”
入電。僕は反射的に面舵を切った。
そして彼女もまた。
──!!!!
水中を黄緑色の太い閃光が4本走り、海全体がまばゆく煌めいた。
海を埋め尽くしていた“悪意”は瞬時に消滅し、後には清らかな海流渦巻く、僕らの愛する大洋だけが残った。
「こ、この出力は……」
その先は言うまでもなかった。後方、はるか先にティアードラゴンの威容が見える。
鎧袖一触。
我が提督、旗艦竜フラッグバーグ・ドラゴンはただの一撃で、海の脅威を排除したのだった。
Illust:ダイエクスト
「報告ご苦労でした。私はティアーナイト アリックス」
彼女が敬礼と共に遅めの自己紹介をしてくれたのは、サイトMに帰還し、経緯報告を終わらせて営舎を出た時だった。
「本日付けでフラッグバーグ艦隊に着任です。以後よろしく」
「こちらこそ。僕はフロート・アサルト」
僕は彼女に敬礼を返しながら、どうしても言わずにはいられなかった。
「ティアーナイト?……というと、あの?」
「通常勤務に加えて、特務班も兼任します。ではブリーフィングがあるので、これで」
「お疲れ様……」
言葉をかける隙もなく踵を返したアリックスに、僕はまだ言いたいことを伝えられていなかった。音楽好きの可憐で上品なご令嬢という第一印象とのギャップにまだ戸惑っていたのだ。
「そうだ」
勇敢なる女性士官は立ち止まった。
「浮遊機雷、助かったわ。ありがとう」
「ど、どういたしまして」
「海中の軍楽隊、また聴かせてくださいね」
アリックスは颯爽と歩き去った。
僕は嬉しくてにやけそうになるのを必死で堪えながら、彼女の後ろ姿に答えた。アクアフォースでも厳格で知られる精鋭部隊の一つ、ティアーナイトにもしもこんな顔を見つかったら酷い目に遭いそうだから。
「喜んで!」
※註.C6ISR:ストイケイア海軍「アクアフォース」の軍事システム。
「軍事行動における、命令Command、制御Control、通信Communications、コンピューターComputers、サイバー防衛および戦闘システムとインテリジェンスCyber-Defense and Combat Systems and Intelligence、監視Surveillance、および偵察Reconnaissance」のこと。ブラントゲートのC7ISRとは違い、海を戦いの舞台とするアクアフォースには外宇宙を考慮にいれた行動規範は無い。
※註.アルファベット、ならびに楽器の名前は地球で使われているものに変換した。※
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《今回の一口用語メモ》
ハイドロエンジン
ストイケイア海軍(旧メガラニカ海軍)アクアフォースで使用される特殊装備。
アクアロイドの海中/海上用武装の動力源として使用され、形状は剣、槍など近接用兵器のほか、銛撃ち銃やライフル、携帯ビーム砲など銃器・大砲までと幅広い。ハイドロエンジンはエネルギー出力時に鮮やかな黄緑色の光を放つことに特徴がある。
その製法や作動原理は旧メガラニカ時代からの秘伝であり、通常の武器では太刀打ちできない「不死の海賊団」、グランブルーの特異能力を持つ船員に対する有効な武器となっている。
地図に記されることのない秘密基地サイトM
さらに旗艦竜フラッグバーグ・ドラゴン、および(後の)フラッグバーグ艦隊のメンバーについては
→ユニットストーリー025「旗艦竜 フラッグバーグ・ドラゴン」
ユニットストーリー034「蒼砲竜インレットパルス・ドラゴン」
を参照のこと。
またアクアロイド、ハイドロエンジンを使用した刃ほか重火器などについても上記を参照のこと。
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本文:金子良馬
世界観監修:中村聡
「喜んで。そちらへどうぞ」
僕は恭しく彼女を珊瑚棚の特等席に導いた。初めて見る顔だ。
今日の観客は一人。いつもは沢山同僚が詰めかけるのだけど、今は非番が少ない時間なのかもしれない。
僕らストイケイア海軍「アクアフォース」の階級はその装備や軍帽でひと目でわかるようになっているが、彼女は少し変わっていた。鮮やかな赤い瞳とエメラルドグリーンの海水になびく薄青色の髪の女性士官は僕と同級。だけど階級だけでは図れない不思議な雰囲気が漂っている。いずれにしてもこれほど美しい人を聴衆に迎えられるのは演奏者として光栄だ。
僕は指揮棒を取り出すと海中の樹に向かって構えた。
周囲の海が静まりかえる。これから起こることを予感して息を潜めるように。
さぁ、心躍る時間の始まりだ。
ドラゴニア海南部、旧メガラニカ。サイトM管轄海域。
ここに「トエルプ島の海中世界樹」がある。
僕、フロート・アサルトは「海中の軍楽隊」を率いる楽団長だ。
世界樹は惑星クレイに幾つもあるけれど、海の中に生えているのは(少なくとも僕は)他に知らない。
植物の中でも「惑星の生命に直結し、地上の生き物たちの活力を伝える」という特別な力をもつのが、世界樹。その世界樹も単独で生きていけるわけではなく、常に僕ら地上の住民が力づけ、励まさなくてはやがて枯れてしまう。その手段こそが……
『音楽。僕ら海の仲間から贈る舞台演奏だ』
僕の振るう指揮棒が海水に黄緑色の軌跡を曳く。これこそアクアフォースの海兵である証。
僕らはアクアロイド。水に魔力を加える事で作られた海の戦士だ。
Illust:沖路
序曲は定番の『演習行進曲』。
指揮棒が刻む軽快なリズムに最初に合流してきたのがイカの群れだ。
海水を捲いて伸縮する彼らが放つ音は、楽器で言うとトランペットといった所。
僕は彼らに頷きながら天上(水面)方向に顔を向けた。小魚が球形群を形成し始めている。
渦巻く魚たちが奏でるのはスネアドラム(小太鼓)。
強い潮流とサンゴが響かせるのはシロフォン(木琴)。
もうおわかりだろう。
僕が指揮棒を振るう「海中の軍楽隊」の演奏者は海の仲間たち、海に棲む生き物たちが奏でる音楽隊なのだ。
地上では、同じストイケイアの音楽隊がバイオロイドと動物たち、竜で構成されるように、僕はただ一人で指揮棒を振るうわけじゃない。陸に棲む動物たちではほぼ不可能な海中の音楽と演舞を、アクアロイドである僕と海の生き物たちが奏でるのだ。
次は『アクアフォース軍歌』。
弐神紀、アクアフォースがまだ今のような規模でなかった頃から歌われている名曲だ。
勇壮な曲調に合わせるかのように、僕の背後に巨大な影が降りてきた。
この海域を常に周遊・監視してくれている友、《深き潮流の鯨》だ。
──!
鯨が奏でる圧倒的な低音はまるで管楽器だ。
“乗ってきた!”
僕の共感能力は噂に聞く満開の大行進リアノーンほどではないと自覚している。それでも、目の前に直立する海中樹、「トエルプ島の海中世界樹」が共鳴しているのは感じられる。樹と僕らと音楽が一体になる感覚。
僕が何より満足感を得られる瞬間だ。
観客の彼女、女性士官も目を閉じて僕らの音楽に聴き入っているようだった。
海中を埋め尽くす音楽の中、くつろいだ様子の美しき女性士官は実に絵になる姿だった。
今日は『絶対正義のテーマ』で締めにしよう。
僕は「海中の軍楽隊」全隊に呼びかけるべく、両手と指揮棒を広げた。
その時──。
……×……×……×× ××× ××
「うっ!」
僕は思わず耳を押さえた。雑音というには控えめすぎるそれは“悪意”の塊のようなものだった。
不快な音がこの場に迫っている。それはひどく汚れていて邪悪で畏怖を伴った、“何か”……。
「樹の前まで下がって!」
Illust:麻谷知世
凜とした声が海水を震わせた。
僕が目を見開くと、あの女性士官は水中推進を全開にして剣を鞘走らせそれに向かって行く所だった。
黄緑色に輝く大剣。
言うまでもない。彼女もアクアロイド。しかもその剣筋は……。
背後に広がる海をいっぱいに埋め尽くし、迫りくる黒い“悪意”たちはまるで──僕にも親しい友人がいるのでこの表現は使いたくないが──小型の人魚のような形をしていた。もちろん本物の人魚の美しさにはほど遠い、それはひどく醜悪で、さらに質の悪いことに世界樹に捧げる音楽を台無しにする“雑音”を放っていた。
「絶対正義の名において!」
彼女の裂帛の気合いと共に、ひと薙ぎで先頭集団の半分が、返す二の太刀でもう半分を消滅させた。
何という切れ味!
僕は舌を巻いた。
ハイドロエンジンが内蔵された僕らの武器には、不死の海賊団グランブルーのゾンビどもも浄化し清浄な海へと戻す力を秘めている。あの“悪意”にもどうやら有効なようで僕は安堵した。
しかし……。
大ぶりな攻撃はどうしても隙を呼ぶ。もちろん彼女はそれを覚悟して、突撃し敵全軍の約半数を消し去ったのだ。
「!」
後続の“悪意”たちが彼女を押し包もうとした。
アクアフォースの海兵は死を恐れることがない。アクアロイドである彼女もまた機能が停止するその瞬間まで敵を見つめ、挑む剣を下ろすことはないだろう。
その時──。
ボボボボ・ボ・ボン!
浮遊機雷が黄緑色の水泡をあげて、“悪意”を吹き飛ばした。
「援護する!」
僕は俊足の彼女にようやく追いついた浮遊機雷を遠隔操作して、女性士官の周囲に素早く防御陣を展開した。
演奏時にはベースとなる音楽を水中に流すこの機器は、戦闘となれば文字通り、爆圧で敵を蹴散らす僕の頼もしい攻防一体の武具となる。
「来なさい!」
女性士官は敵に挑む気合いを入れ、また剣を一閃させた。
今度は彼女の背中も周囲も僕と浮遊機雷に守られている。形勢は持ち直していた。
“フロート・アサルトより司令部。トエルプ島の海中世界樹に敵襲あり。数多数。既存の海の生物との適合なし。“悪意”と仮称。増援求む”
僕は司令部のあるサイトMのC6ISRにリンクしながら、敵に向かって突進した。
彼女は前線しているが、敵の数はあまりに多い。……間に合うのか。
僕もまた死を覚悟して水中を駆けた。誇り高きアクアフォース海兵として。今はたった二人の軍隊だったとしても。
“司令部了解。2秒後に後方より斉射。射線上から速やかに回避せよ”
入電。僕は反射的に面舵を切った。
そして彼女もまた。
──!!!!
水中を黄緑色の太い閃光が4本走り、海全体がまばゆく煌めいた。
海を埋め尽くしていた“悪意”は瞬時に消滅し、後には清らかな海流渦巻く、僕らの愛する大洋だけが残った。
「こ、この出力は……」
その先は言うまでもなかった。後方、はるか先にティアードラゴンの威容が見える。
鎧袖一触。
我が提督、旗艦竜フラッグバーグ・ドラゴンはただの一撃で、海の脅威を排除したのだった。
Illust:ダイエクスト
「報告ご苦労でした。私はティアーナイト アリックス」
彼女が敬礼と共に遅めの自己紹介をしてくれたのは、サイトMに帰還し、経緯報告を終わらせて営舎を出た時だった。
「本日付けでフラッグバーグ艦隊に着任です。以後よろしく」
「こちらこそ。僕はフロート・アサルト」
僕は彼女に敬礼を返しながら、どうしても言わずにはいられなかった。
「ティアーナイト?……というと、あの?」
「通常勤務に加えて、特務班も兼任します。ではブリーフィングがあるので、これで」
「お疲れ様……」
言葉をかける隙もなく踵を返したアリックスに、僕はまだ言いたいことを伝えられていなかった。音楽好きの可憐で上品なご令嬢という第一印象とのギャップにまだ戸惑っていたのだ。
「そうだ」
勇敢なる女性士官は立ち止まった。
「浮遊機雷、助かったわ。ありがとう」
「ど、どういたしまして」
「海中の軍楽隊、また聴かせてくださいね」
アリックスは颯爽と歩き去った。
僕は嬉しくてにやけそうになるのを必死で堪えながら、彼女の後ろ姿に答えた。アクアフォースでも厳格で知られる精鋭部隊の一つ、ティアーナイトにもしもこんな顔を見つかったら酷い目に遭いそうだから。
「喜んで!」
了
※註.C6ISR:ストイケイア海軍「アクアフォース」の軍事システム。
「軍事行動における、命令Command、制御Control、通信Communications、コンピューターComputers、サイバー防衛および戦闘システムとインテリジェンスCyber-Defense and Combat Systems and Intelligence、監視Surveillance、および偵察Reconnaissance」のこと。ブラントゲートのC7ISRとは違い、海を戦いの舞台とするアクアフォースには外宇宙を考慮にいれた行動規範は無い。
※註.アルファベット、ならびに楽器の名前は地球で使われているものに変換した。※
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《今回の一口用語メモ》
ハイドロエンジン
ストイケイア海軍(旧メガラニカ海軍)アクアフォースで使用される特殊装備。
アクアロイドの海中/海上用武装の動力源として使用され、形状は剣、槍など近接用兵器のほか、銛撃ち銃やライフル、携帯ビーム砲など銃器・大砲までと幅広い。ハイドロエンジンはエネルギー出力時に鮮やかな黄緑色の光を放つことに特徴がある。
その製法や作動原理は旧メガラニカ時代からの秘伝であり、通常の武器では太刀打ちできない「不死の海賊団」、グランブルーの特異能力を持つ船員に対する有効な武器となっている。
地図に記されることのない秘密基地サイトM
さらに旗艦竜フラッグバーグ・ドラゴン、および(後の)フラッグバーグ艦隊のメンバーについては
→ユニットストーリー025「旗艦竜 フラッグバーグ・ドラゴン」
ユニットストーリー034「蒼砲竜インレットパルス・ドラゴン」
を参照のこと。
またアクアロイド、ハイドロエンジンを使用した刃ほか重火器などについても上記を参照のこと。
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本文:金子良馬
世界観監修:中村聡