ユニット
Unit
短編小説「ユニットストーリー」
108 龍樹篇「ゴアグラビディア ネルトリンガー・マスクス」
ブラントゲート
種族 スペースドラゴン
Illust:山宗
黒煙と炎の照り返しが極夜を焦がす。
隕石落下の衝撃で蹂躙された南極中央部の大地は、幾つもの円形に抉られた煮えたぎるマグマ溜まりへと変じている。
そんな南極の惨状を双子月が冷たく見下ろしていた。
「月は時に、荒々しく世界を見守る。……どうやら今宵、月は我らに微笑まぬようですな。バヴサーガラ様」
封焔竜シャブダは主にそう告げた。
ここまで龍樹の落胤ロイド・アクゼリュスどもに振るってきた戦鎌にもたれかかる竜の目は穏やかだった。彼は熟練兵である。戦場では熟練者ほど験を担ぐ。夜に月が味方してくれなくては生還もおぼつかないだろう。
だが臣下が信心深い竜戦士ならば、主は占星術を含む古今東西の魔法知識に精通する永年の巫女である。
「双子の月は中天をはさんで“衝”にあり。戦の相だ。決着の行方はまだ読み取れぬ」
バヴサーガラはクレーターの崖の上で腕を組んで豊かな胸を張った。外見は若く美しい人間の女性だが、厳しい顔と隙のない盤石の構えからは歴戦の勇将の風格すら漂っている。
封焔の巫女は雪原だったものから目を離すことなく、忠実なる竜を労った。
「お前はよく戦った。いま少し休むがよい」「は……お言葉かたじけなく」
雨霰と降り注いだニートネス・メテオシャワーに、さしもの精強を誇る封焔竜軍団も分断され、長であるバヴサーガラと身を挺して主を守り続けた直衛の封焔竜シャブダだけが、いま戦線の最突端に取り残されている。
「天輪聖紀の世となり、各国に善き若い芽も育っている。惑星クレイの未来は彼ら彼女らに安心して託すことができる。よしんばこの地で斃れようとも、この私に悔いはない」
それは独り言だったが、ただ主だけを見つめている封焔竜が聞き逃すわけが無かった。
「ふ。そうですな。しかしあなた様の征く先がいかなる場所であれ、最後まで忠義を尽くすが我が封焔竜の誇り。此の世であれ彼の世であれ」
「その気持ちは有り難く思うが、無駄死になど誉められんぞ」
「バヴサーガラ様?」
シャブダは主の言葉の意味を計りかねている。
「我が友も“逃げよ”と言い残した。ギーゼ=エンドの地で龍樹の真の力を垣間見、勝算が薄いと看破したのだろう。逃げもまた戦術、降伏も再起への一歩。だが、私はまだ投了するつもりなどない」
我が友とは言うまでもなく、絶望の精霊トリクムーンのことだ。傷を癒やすため、彼の身はいま暁紅院に預けられている。
「それでこそ我らが創り主。お供いたします」
封焔竜は戦鎌を構え直した。
「うむ。……そして見よ。どうやら我らの忍耐は正しく報われたようだぞ」
バヴサーガラが毅然と顎で指す方を見て、老練の封焔竜は凍りついた。
隕石孔の中に立つ影がある。
夜闇を透かしてさえ、燃え上がるような朱。
それは本来、蒼く暗い水底の王国を統べる者の姿だった。
「ここからは2人だけの戦い。待ちわびたぞ、この時を。ゴアグラビディア ネルトリンガー・マスクス」
封焔の巫女の呟きを、はるか前方の彼女は聴き取ったとでもいうのだろうか。
仮面をつけたグラビディアンの王は、長い胴体をくねらせて速やかに戦闘態勢を整えた。
Illust:黒井ススム
絶望とは優しい闇だ。
すべてを平らげ、零に戻して新たな世を再構築する。
龍樹に寄る者ネルトリンガーは自ら破壊し尽くした南極の氷原の中心に立ち、久々に地上の風──極夜の南極は気温-80℃にも達し強風はそれ以上に体温を奪うがグラビディアンにはまったく問題ない──を全身で感じながら、己がかつて与した《世界の選択》を思い起こしていた。
隕石の本質は破壊、すなわち絶望の先鋒だ。
我、ネルトリンガーこそはその破壊を司る氷の女帝である。
そして世の絶望を司る者こそ、いま遠く離れたクレーターの淵に仁王立ちする青と黒の衣の女性……
『初にお目にかかる、封焔の巫女バヴサーガラ。もっとも、絶望を崇めてきた我としては初めてとは思えないが』
『この度、一騎打ちの申し出を受けてくれたこと。感謝する』
思考には思考で。
封焔の巫女は氷の女帝ゴアグラビディア ネルトリンガー・マスクスへと鷹揚に返信した。
ここまでの経緯については少し説明が必要だろう。
ネルトリンガーとグラビディアンが龍樹の軍門に下ってからわずか数日後。
今まで微妙な均衡が保たれてきた、ブラントゲート国とグラビディアンの地下王国の相互不可侵は突然破られた。
もともと柩機の主神オルフィスト・レギス率いる柩機軍団の攻勢に危機的状態にあったブラントゲート4大ドーム、すなわちセントラル、ウェスト、イースト、ファーイーストは、さらに天から降り注ぐ隕石雨に襲われることになった。
“こんなこと頼めた義理じゃないんだが。助けてくれ”
そんな短い暗号文を受け取ったバヴサーガラは(驚いたことにメッセージを運んだのは伝書鳩型のワーカロイドだった。水晶玉ネットワークが断絶しているため窮余の策なのだろう)、セントラルドームに籠城するブリッツ・インダストリーCEOの窮状を察すると、《希望の峰》山腹から封焔竜全軍をブラントゲート国に向けて急進させたのである。仮に援助を要請されたのがドラゴンエンパイア国だったとしたら、南極同様、龍樹侵攻に対する防衛に戦力の大部分を割かれていた上に、他国への正規軍派遣となればこれほど俊敏に対応することはできなかっただろう。
バヴサーガラの軍事力・政治力はそれ自体が小国家ひとつに相当する、との評判は正しいものだった。
『そして我らの優位をつき崩してくれたな。見事だ』
とネルトリンガー。相手を正しく評価することは統治者に求められる第一条件である。
事実、封焔竜が合流してからのブラントゲート全軍、極光戦姫およびブリッツ・インダストリーの“サプライズ武装”(CEOの命名である)防衛隊の反攻はめざましく、柩機=グラビディアン連合軍の攻勢を押し返しつつあった。
『いいや。盛り返してはいるが、このままでは長期戦になること必至』
『故に一騎打ちを打診してきたというわけか。消耗戦は望むところかと思っていたぞ、絶望の巫女』
氷の女帝は身体をうねらせながら思考でつぶやいた。
その連絡はセントラルドーム攻略中、直に彼女の頭脳に思考のメッセージで届けられたものだ。
敵とはいえ、信奉する絶望の司祭からのいわゆる直電である。ネルトリンガーはある種のときめきを抑えられなかった。
『絶望とは優しい闇だ。古くなり硬直化したものの破壊こそ再生への道。だが、殺戮も支配も望む所ではない』
ネルトリンガーは、自らが秘め隠していた思いそのものをバヴサーガラに言い当てられたようで、愕然とした。
絶望の巫女──今となっては古い呼び名ではあるが──は続けた。
『かつてケテルサンクチュアリが天と地に分かれて争わんとした時……』
『バスティオンとユースベルクよな。聞いている。あれは確か、天輪の巫女の計らいで』
ネルトリンガーの思念は地上の電子通信網に侵入できるため、各国の動きにも詳しい。
『そうだ。まぁあの若者たちは放っておいても自然とああなっただろうがな。ケテルも安泰であろう』
若者とはバスティオンとユースベルクの両雄のことらしい。確かにバヴサーガラもその魂は数千年の齢を数え、ネルトリンガーも冬眠を含めれば悠久の年月を生きてきた存在だ。彼女らに比べれば若者には違いない。
『なるほど……で。ことの決着はどうするのか』
とネルトリンガー。いまは敵同士として向き合っているとはいえ、絶望の司祭とその信奉者の間柄である。油断すると、新世界の若者について批評する歴史の証人たちの語らいになってしまう。
『無論、勝負をつけようではないか。我らは戦士。戦いで語らうのが習い』
バヴサーガラは背後の封焔竜を制してクレーターの淵、絶壁の上で手を挙げた。
戦闘準備。
『いかにも。絶望の祭司と戦えるのは身に余る光栄だ』
ネルトリンガーは赤い波動を竜巻のように身体に纏った。
封焔の巫女対氷の女帝──。
マグマの池にブリザードが吹き荒れる南極を舞台に人知を超えた戦いが始まった。
封焔の巫女が飛んだ。文字通り空へと飛翔したのだ。
普段、アーヒンサなど臣下の封焔竜の背に身を預けているのは、彼女に騎乗されることを何よりの光栄な務めだと考える封焔竜たちがその座を争っているためと、将として或いは優れた竜飛行士として集中するためであり、バヴサーガラは実際、臣下の誰よりも速く巧みに飛行することができた。
バヴサーガラはまっすぐにグラビディアンの支配者に突っ込んでいった。
『侮るな!』
ネルトリンガーは奮い立った。
思考の指がくいと上空を差し招く。
ネルトリンガーの頭脳の中で、岩石の供給源である近宇宙の南極直上小惑星帯、そして自転する惑星クレイの姿、クレイ周囲に密集する惑星の重力多体系を加味した進入角が複数、模式図化されてゆく。また、いつぞやのような思わぬ妨害にも警戒し、目まぐるしい計算と“力”の制御の中であっても軌道上の監視を怠ることはない。
仮面に覆われていない目がカッと開いた。
天空より隕石の雨が降る!
ブラントゲート政府が“整然たる隕石雨”と名付けた集中豪雨である。
マイクなどでは集音できない。音圧そのものの轟砲が大気を揺り動かし、すでに荒地と化していた雪原はさらなる灼熱の地獄と化した。
『見たか!』
ネルトリンガーの思考が吠えた。
いかに封焔の巫女バヴサーガラといえどもその肉体は所詮、人間。……いや人間だけではない、いかなる生物も広範囲の大質量隕石に襲われて、死を免れる道理がないのだ。
『見たよ。だけど僕がいる限り、バヴサーガラはやらせない』
思わず見上げた先で、月が笑った。
Illust:オサフネオウジ
惑星クレイの第一の月を背に、絶望の精霊が舞い降りてきた。
その直下に(おそらく瞬間移動させられたのだろう)まったく同じ姿勢で手を広げたバヴサーガラがいる。しかもいつの間にかその手には、封焔の剣プリティヴィーと封焔の盾スワヤンブーが装備されていた。
「遅かったではないか」とバヴサーガラは笑って歓迎し、
「治療に手間取った。暁紅院には年寄りが多い」とトリクムーンも憎まれ口を叩いた。
『一騎打ちではなかったのか』
とネルトリンガー。もっとも事前に得ている情報としてもトリクムーンは戦力として小さかった為、真剣に抗議したわけでは無い。だが音声での2人の返答は随分と人を食ったものだった。
「残念ながら認めてもらうしかない。彼はこの肉体の創り主、つまりトリクムーンと私は一心同体なのだから」
「それに僕の今回の役目はいわば“太刀持ち”だ。加勢ではない。騎士にはいざという時に戦棍を渡す従者が必要だろう」
『揃いもそろって屁理屈ばかり……では共に滅べ!!』
ネルトリンガーは激怒した。
先ほどまでの毅然と戦うバヴサーガラの美しき女将軍ぶりが、このちびっこい精霊が現れた途端、花畑ではしゃぐ村娘といった風まで余裕を持っている。国の存亡を賭けた神聖なる戦いを何だと思っているのか。絶望に魅せられ、国の再興を《世界の選択》に夢見た我は何だったのだ?!
『墜ちよ星屑、地上に厄難をもたらせ!フォーリング・ヘルハザードーッ!!』
絶叫の思念とともに、今ふたたびのニートネス・メテオシャワー。
地形が弾け飛び、閃光と轟音、衝撃波が完膚なきまでに南極の大地を破壊した。
いかなる生物、いや物質も存在しえない業火の中。
それが見えた。
Illust:saikoro
トリクムーンの姿が変わっていた。
彼はもうあの小さく非力な絶望の精霊ではない。
「僕の名はヴェルロード。友と同じ色、深き蒼を纏う月のタリスマン」
そう言いながら、トリクムーンだった者はどこからか取り出した長大な戦棍をバヴサーガラに渡した。逆はよく聞く呼称だが、トリクムーンの方からバヴサーガラを“友”と呼んだことは今まであっただろうか。その正解はバヴサーガラの口元に浮かぶ満足げな微笑が物語っている。
「封焔の槌スーリヤ!」
叫びながら大きく振りかぶったバヴサーガラはそのまま自らに迫る隕石を打ち返した。
ジャストミート!
なんと自らが墜とした隕石に襲われる事になったネルトリンガーが避ける間もなく、ライナー性の当たりはそのまま龍樹の仮面を直撃した。
「ぐわぁぁっ!」
思わず苦鳴を発音してしまうネルトリンガー。だが封焔の2人の反撃は始まったばかりだ。
再び、しかし淡々とヴェルロードはもうひとつの武器を手渡した。
「封焔の斧トヴァシュトリ!」
叫びとともに振り下ろされた戦斧は、煮えたぎる大地ごと引き裂いて龍樹に連なる者、ゴアグラビディア ネルトリンガー・マスクスを打ち倒した。
「封焔の銃 チャンドラ!」
またしても神速にして息もつかせぬ武装交換。
容赦のない追撃。そしてこれが止めだった。バヴサーガラは巨大な銃を肩付けにして膝立ち、目を細めて照準を定めていた。
殺られる、とネルトリンガーが直感した次の瞬間、封焔の弾丸が頭部を直撃した。
「──!!」
正確な狙いに仮面だけを弾かれ、天を仰いだネルトリンガーを哀しげなブラント月が照らす。
朦朧とした視界の中で重なる双子月は“合”。それは戦いの終わり、調和と新しい力の座相だった。
Illust:前河悠一
「降伏せよ。氷の女帝」
封焔の銃チャンドラを構えたバヴサーガラは、ネルトリンガーを配下のグラビディア・ウィラメーテが支え起こすのを許した。ネルトリンガーの顔にはまだ壊れた仮面の残骸が着けられている。
『あぁ。我の負けだ。だがどうか我が臣下のグラビディアンには寛大な措置を』
『私と友が目指したのは、貴女が本道に立ち戻ってくれることだ。グラビディアンを滅ぼすなど考えてもいない』
バヴサーガラは思念を広く開放して、この場に駆けつけたグラビディアンと背後から援護に駆けつける封焔竜にも聞こえるように“話した”。
『だが我は絶望の名の下に夢見た王国の復興、理想の世界までは諦めるつもりはない。それでも放置すると?』
『私は、絶望の巫女だ。過去にそう名乗り《世界の選択》ではこの世の半分を背負った。そして……』
バヴサーガラは友の新しい姿、ヴェルロードを顧みた。
ヴェルロードは黙って頷いた。バヴサーガラの考えは掌を指すように理解できたからだ。
『世界の希望と絶望の差とは、実はごく僅かなものであった』
グラビディア・ネルトリンガーは目を見開いた。
『現状を活かし延長としての未来を夢見る光の“希望”。現状を打破し再生する未来を望む闇の“絶望”。……貴女は地上のことも見聞きしていて知っているだろう。神格ニルヴァーナは全ての種族を照らす力、希望と絶望すべてを包み込む力だ。そして惑星クレイで生きるグラビディアンもまたニルヴァーナの加護の下にある』
『すべてを包み込む力、ニルヴァーナ……』
ネルトリンガーはつと胸を突かれた様子になった。
バヴサーガラの思念の演説は高まり、まさに絶望の巫女の名にふさわしいものになっていた。
『《世界の選択》のあと私、バヴサーガラは太陽が未来を照らす限り、月は太陽に寄りそうと誓った。だが、もし絶望が希望の光を上回る時があれば、闇は必ずや世界を覆うであろう。我らの帰依すべき闇とは生命の源。優しき闇である。その時はまた私が絶望の冠を被り、世界を新たな実りある形へと導こう。そしてそれをいまここに私は誓う』
『バヴサーガラ……』
ネルトリンガーだけではない。地上にあがってきたグラビディアンも、背後の封焔竜の軍勢もみな等しくバヴサーガラとそのタリスマン、ヴェルロードに跪いていた。
『グラビディアンよ。地下の闇を愛するものよ。故にいまは希望の名の下に龍樹の力の則を退け、運命力の独占に対して共に“否”を唱えて欲しい。ブラントゲート国との和平、共存の道を探ることにも我とわが友、そして封焔竜軍は喜んで協力する。そして汝ら一族が光を受け入れてなお希望を抱けぬ日が訪れたなら、その時は再び私に絶望の祈りを捧げるがいい。我はそれを必ず聞き、受け止めよう。我は封焔の巫女バヴサーガラなれば』
バヴサーガラは伏していたネルトリンガーの顔を上げさせ、その仮面を優しく外した。
それは燃え上がり荒れ果てた南極の大地でグラビディアンにもたらされた、封焔の巫女からの祝福だった。
了
※註.単位について等は地球の言語に変換した※
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《今回の一口用語メモ》
ヴェルロードとタリスマン
トリクムーンは絶望の精霊である。
彼の属する「タリスマン」という種族は、天輪の一行と行動を共にする希望の精霊トリクスタとともに、天輪聖紀に入ってから見られるようになったもので、長い惑星クレイの歴史でも珍しい存在だ。
他のクレイに誕生した生物と違い(ユニットストーリー001「トリクスタ」によれば)どうやら天輪聖紀の幕開けを告げる最初の《世界の選択》の予兆として、この世界の“希望”をトリクスタが、“絶望”をトリクムーンがそれぞれ一身に集めて虚空から生まれ出たようにも思える。
トリクスタは自我を持ってすぐにリノと焔の巫女に合流しているのに対して、トリクムーンはそんな(トリクムーンに対する)リノのような存在を「現し身」とすべくリノリリを創り、これにバヴサーガラの魂を入れた。トリクムーンは表に感情を出すことが稀ないしは苦手らしいので判りづらいが、《世界の選択》の前もその後も、トリクムーンは常にトリクスタとリノを意識しながら行動しているようだ。
無表情なりに彼の思いを察するならば、かつて“絶望”から実体化させたリノリリが人間(バヴサーガラ)になったように、トリクムーン自身もいつか「ヴェルリーナに変身できるトリクスタ」のようにバヴサーガラの力になりたいと考えるようになったのではないか。また、単独行動は珍しくないが常に慎重派だったトリクムーンが今回は敵本拠まで深追いし、ギーゼ=エンド湾で瀕死の重傷を負ったのもそうした想いの現れだったのかもしれない。
きっとそうした切実な“絶望”の祈りと死の淵から這い上がった生命力の爆発が今回、トリクムーンの新たな形態「ヴェルロード」を生み出したのだろう。
そしてこれで空間の歪みを発生させ瞬間移動したり、隠密行動できる機動性や情報収集能力だけでなく、いざという時には変身してバヴサーガラを守り支えることも可能となった。トリクムーンにしても、リノリリを生み出したのと同じくらい喜ばしく満足できる結果となったのではないだろうか。
いずれも無表情を崩さないトリクムーン本人が認めることは決してないだろうけれど。
タリスマン誕生については
→ユニットストーリー001「トリクスタ」
の冒頭を参照のこと。
トリクムーンによって(バヴサーガラの現し身としての)リノリリが創られた経緯については
→ユニットストーリー042「天輪聖竜ニルヴァーナ(覚醒編)後編 ~サンライズ・エッグ~」
を参照のこと。
トリクムーンとトリクスタの関係については
(それぞれができる事とその違い、またトリクムーンがリノやトリクスタをその時々にどう意識してきたか)
→ユニットストーリー040「ヴェルリーナ・エスペラルイデア(後編)」
→ユニットストーリー042「天輪聖竜ニルヴァーナ(覚醒編)後編 ~サンライズ・エッグ~」
→ユニットストーリー072 「天輪鳳竜 ニルヴァーナ・ジーヴァ(後編)」
→『The Elderly ~時空竜と創成竜~』後篇第1話 遡上あるいは始源はじまりへの旅
を参照のこと。
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本文:金子良馬
世界観監修:中村聡
世界観監修:中村聡