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あー、今回も死ぬかと思った。いきなり爆発するんだもの。 -
まったく相変わらず情けないのう、アリウス。お前ときたら……。 -
なに言ってるんです。ギーゼ=エンド湾にちょっと侵入して観戦するだけなら危なくないって、師匠が言うから……。 -
フッ、“私は”何も危なくなかったがな。 -
いいですよね。師匠は危険が迫るとムーンバックの背中に乗って、飛んでいっちゃえばいいんですから。 -
お前の逃げ足が遅いだけだろう。さて本題だ。 -
はぁ、先ほどギーゼ=エンド湾の戦いが終わった「龍樹」についてですね。 -
うむ。今回の龍樹侵攻について、つい見落としがちな裏側のことから振り返ってみよう。 -
はい。事件はまず龍樹の種であるグリフォシィドが惑星クレイに落ちてきた所から……。 -
そこから違う。ケテルサンクチュアリの旧都叛乱未遂事件を思い出すのだ。 -
あ!白き世界樹が“悪意”の群れに襲われたやつですね。悪意は龍樹の信奉者のなれの果てだとか。つまりそれ以前から予兆はあったという事ですか? -
あぁ。今となっては遠い過去のことのようでもあるがな。私の調査ではどうも宇宙から降ってくる前から龍樹とその力を崇め、到来を待ちながら、惑星クレイの抵抗力を支える「世界樹」の力を衰えさせるために暗躍していた集団がいたらしい。 -
その集団っていまだ正体不明なんですか。不気味ですね。 -
そうだ。その後の龍樹侵攻でも、各地に協力者や龍樹に同調する者が相当数いたらしいからな。特定の組織というよりも力に魅せられた不特定多数という感じだ。 -
同調者といえばマスクスがそうですよね。仮面はこの後どうなるんでしょう。 -
そのまま、ではないかな。 -
そのまま!? でもあれには龍樹の力が…… -
龍樹=悪と決めつけるのは一方的過ぎないか、アリウス。確かに運命力を食い尽くそうと龍樹がこの惑星を脅かしたのは悪い事だし、仮面も依存し過ぎれば破滅をもたらす。だが龍樹の強すぎる力も使い方次第で善となるかもしれんぞ。共生できればな。 -
「力」は使う人によって善にも悪にもなるってことですか。 -
そうだ。でなければオルフィストやゾルガが、マスクスになってまで龍樹の本質を見極めようとするわけがない。彼らはブラント月にある未来の予言、メサイアの碑文の内容を知って動いていたのだ。 -
じゃあ「龍樹を無理に押さえつけると惑星クレイが滅ぶ」みたいな事が? -
記されていたのではないかな。まぁ、もっと高尚な書き方だとは思うが。 -
それにしてもずいぶん遠回りなやり方でしたね。龍樹退治は。 -
つい「力」に目を向けがちだが、龍樹の真の恐るべき点は知性の高さだ。我々は常に先回りされ、裏をかかれていた。 -
あぁ。「終わりの始まり島」ですね。ひどい目に遭いました。 -
あれは面白かったな。お前がボロボロになっていく様子が。 -
師匠! -
冗談はさておき今回、最終局面まで天輪の巫女リノを追い込んでいった手際と巧妙さは、敵ながら見事すぎるだろう。 -
龍樹は「神格の化身ニルヴァーナが姿を変え真に覚醒する瞬間」を狙っていたんですよね。神格の運命力を一気に呑み込むために。 -
それにはリノたちが長い苦悩の末、精一杯戦って、そして敗北する必要があった。安定した形態のニルヴァーナ相手に、正面切って戦いを挑むのは龍樹にしてもリスクが高すぎるからな。 -
準備周到、頭も良くて力も強い、莫大な運命力を取り込んで巨大化した「龍樹」。よく勝てましたね、僕たち。 -
文字通り薄氷の勝利であった。もっとも、お前が戦ったわけではないがな。 -
はぁ……。 -
決め手となった五身合体「武装焔聖剣 ストラヴェルリーナ」と希望の祈りについては、ケテルのゲイド副団長からレポートがあがっているぞ。しっかり読んでおくのだ。後で感想文も書かせるからな。偉大なる師であるこの私が添削してやる。 -
はーい……なんだか学生に戻ったみたい(がっがり)。
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世界観コラム ─ セルセーラ秘録図書館