カードファイト!! ヴァンガード overDress 公式読み物サイト

世界観

World
世界観コラム ─ セルセーラ秘録図書館

016「凶眼」

  • ……。師匠、お腹空きましたぁぁ~。
  • (嘆息)お前は子供か。少しは辛抱せよ。
  • でも僕、もう何日も食べていないんですよ。お水ばかりで……。
  • 空腹は私とて同じだぞ。やれやれ、こんな状況になっても自分のことばかりか。
  • これまでの長い旅もあなたの心までは鍛えられなかったのですね、アリウス。まったくなげかわしい。
  • あ!マクガフィン!久しぶりに喋ったと思えば、何だよその言い方。どうせ君はお腹空かないよね。ただの杖なんだし!
  • 私は世界に名高い“賢者の杖”ですよ!その物言いは失礼でしょう!
  • 二人とも止めよ。ケンカなどしても消耗するばかりだぞ。ここは落ち着いて現在の我らの状況を見つめ直してみるがいい。


  • はぁ……まず、龍樹の侵攻が本格化したのが約1年前でしたね。
  • ダークステイツ全域、ドラゴンエンパイア南部、西ストイケイアすなわち旧メガラニカ地方の主要地域が、瞬く間に龍樹の支配下におかれました。
  • そしてその“龍樹侵攻”の中心は、ギーゼ=エンド湾であった。
  • 敵の本拠として真っ先に疑った場所なのに……。僕らは見当違いな場所ばかり探し回ることに。
  • 我ら全員が騙されたのです。
  • うむ。もっとも怪しまれるであろう地点に本拠を隠し、攻略の点(ポイント)を線に結んで浸透し版図を広げてゆく手際の鮮やかさ。敵側にはどうも優れた軍師がいるようだ。
  • 誉めてる場合じゃないでしょ!今はもう、龍樹に従わない側の僕らはこうやって監視の目を盗んで隠れながら暮らすか、まだ支配の弱い地域に逃げ込むことしかできないんですから……。
  • しかしセルセーラ様。いまアリウスが挙げた安全圏からすると、我々がいるこのダークステイツ奥地の渓谷はまさに敵の勢力下と言えるのでは?
  • あぁ。だが東洋のことわざで“虎穴に入らずんば虎児を得ず”と言うであろう。実はここに龍樹の腹心の一人「凶眼」の根(ルーツ)があると聞いたのだ。敵の情報を得られれば我らの抵抗活動(レジスタンス)にも役に立つかも知れぬ。
  • 虎穴も虎児も結構です!帰りましょうよ!ね、師匠?!
  • もう遅い。ほれ、あの声が聞こえぬか。
  • Illust:Moopic
  • そういえばさっきまでニャアニャア聞こえてたのは猫の鳴き声だったけど……
  • 凶眼獣アマナキィティ。形は猫でも悪魔(デーモン)だぞ。
  • 師匠!今、チラッと姿が!あれは……カラス!?
  • しっ!声を潜めよ、愚か者。凶眼獣アマナクロウグに変化したぞ。ヤツの目と耳は鋭い。
  • Illust:Moopic
  • なるほど。猫の忍び足で近づきカラスの視力で監視する。動物の特技を巧みに使い分けていますね。
  • マクガフィン……他人事みたいに言ってるけど、君も狙われてるんだからねっ!
  • さあ、どうやら次の形態らしいぞ。凶眼獣 アマナオウルズだ。
  • Illust:Moopic
  • 待って!何か言っていますよ。『おまえ達の動きはすべてお見通しだ。抵抗せず、投降せよ』ですって。
  • 慌てるな!まだ見つかってはいない。我らを動揺させようとしているのだ。ヤツにはまだ奥の手がある。その姿を見極めるまではまだ逃げるわけにはいかぬ。
  • 実に興味深い。どの形態も知性が高く狡猾で、魔力に溢れている。セルセーラ様がおっしゃる通り、外見は獣でも実体は悪魔なのですね。
  • うむ。そして最大の特徴があの怨念渦巻く「凶眼」だ。あれには不吉な死の気配が漂っている。噂通りだ。
  • あの不気味に輝く右眼ですね。でも死の気配とは?
  • アマナはもともとダークステイツをさまよう一匹の野良猫であったという。そのアマナが辿り着いたのが、この渓谷「ハイビーストの隠れ里」だった。瘴気が枯れた荒れ地で弱い者同士支え合って暮らしていた彼らは、孤独だった彼女を温かく迎え入れた。
  • ハイビーストの里?……でも今ここにはそんな住民は見当たりませんけど。
  • 全滅したのだ。アビスドラゴン同士の縄張り争いに巻き込まれてな。
  • そんな……。
  • 弱肉強食は自然の掟。特にこのダークステイツの奥地では厳しいものとなる。
  • それでアマナは?
  • 唯一の生存者となった。瀕死の重傷は負ったが。……そしてその後、アビスドラゴンも壊滅させられた。
  • えっ!?いったい何が?
  • この地に再び瘴気が湧きだし、戦いで失われていたアマナの右目に「凶眼」となって結集したのだ。復讐に燃えるアマナによってアビスドラゴンは一掃され、この地に新たな支配者が誕生した。恐怖を食らい活力と成す者、その名は凶眼竜アマナグルジオ。
  • 恐怖の支配者……アマナグルジオ。
  • アマナグルジオの様々な姿は、かつて温かく受け入れてくれたハイビーストの家族や、倒した敵の姿と力を模したものだという。そして恐るべきことにアマナグルジオには龍樹の力をたくわえた、さらなる進化形もあるというのだ。ただでさえ無双の強さを誇る竜がこれ以上に強くなると、我々も……。
  • ……!セルセーラ様、竜が現れました!我々の居場所が察知されたようです!
  • 来たか!アリウス、水晶玉(マジックターミナル)のカメラを向けよ!
  • は、はいっ!でも……。
  • 謎のヴェールに包まれていた凶眼竜の動画が手に入れば、我々の力となるであろう。できる限り撮り続けるのだぞ。……では行くぞ!マクガフィン、むーちゃん(※注.無敵の獣ムーンバック)!三十六計逃げるに如かずだ!
  • はい、セルセーラ様!
  • ちょっとー、僕は置いてけぼりですかー!?じゃあどうやって動画データ回収するんですかー!このままだと僕やられちゃいますよー!ダメですよー!待ってくださーい!!
  • Illust:touge369