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世界観コラム ─ セルセーラ秘録図書館

015「プレアドラゴン」

  • バルコン、アダマロス、ガロンダイト、ビルスキル、ブラマーダ。
  • 師匠、どうしたんですか?空を見上げたかと思ったら。急にニコニコされて。
  • ふっ、わからんだろうな。いま新しき竜たちの機影を見、名を呼んだのだ。天輪竜の再誕を祝うこの晴れの日に、他でもない暁紅院で彼らの姿を間近に見られるとは実にめでたい。
  • “彼ら”とは?
  • お前には見えなかったのか。まぁ彼らは速いから仕方ないな。プレアドラゴンたちが今、通り過ぎていった。その背には天輪竜の卵と巫女が乗っていたはずだ。
  • プレアドラゴン?
  • “祈りの竜”だ。封焔の巫女バヴサーガラの祈りによって生み出され、天輪へと贈られた新たなる竜の一族。バヴサーガラはかつて身に宿す絶望の焔を竜に分け与えることで「封焔竜」を生み出した。いわば彼ら封焔竜は“絶望の仔”、今回のプレアドラゴンは“希望の仔”と言うわけだ。
  • バヴサーガラといえば……。
  • そうだ。ついこの前までは絶望の司祭、滅日の巫女として《世界の選択》では惑星クレイ世界の半分を担った者だ。
  • それがこの暁紅院に贈り物ですか。
  • 正確に言うと、天輪竜とその一派のためだな。いま天輪竜の卵がサプライズ・エッグとして再誕し世界が沸いている、この祝いの日にふさわしい引き出物と言えよう。
  • それにしても急にいい人になっちゃったんですね。
  • いいや。もともと天輪聖竜のもつ偉大なエネルギーには畏敬の念を抱いていたようだ。その思想と野望は過激だったが。
  • (一度、本気でケンカしたほうが仲良くなれるタイプなのかな)
  • 今は天輪の巫女リノとも肝胆相照らす仲であるという。バヴサーガラは文武に優れ、政治力もあり、友や同志にはいかなる援助も惜しまない。
  • でもそんなになんでもかんでもできるんだったら、自分一人で動けばいいんじゃないですか?
  • お前はもっと演劇も観なければなぁ、アリウスよ。もっとも優れた能力と経験が必要な立場とは、主役を支える名脇役なのだ。とはいえ《世界の選択》以後のバヴサーガラの世話見好きは、思いやり深いもう一人の人格の存在さえ疑うべきかもしれぬが……。
  • 師匠、ちょっと詳しすぎません?
  • ほう。鋭いのう、アリウス。実はつい昨日、バヴサーガラその人と話し合う機会があったのだ。噂に違わぬ大人物だったぞ。
  • えっ!いつの間に!?
  • 貴様がぐぅぐぅ呑気に寝ている間だ、未熟者め。……まぁ、たまたま深夜の空中散歩の途中で遭ってそのままランデブーと洒落込んだのだが。これも、むーちゃん(註.セルセーラの友、最強の獣ムーンバック。空を飛べるが海が苦手)のおかげだな。
  • はぁ……いいなぁ、超有名人と話せて。
  • プレアドラゴンもそうしたバヴサーガラの大盤振る舞いの一つなのだ。これで天輪の一行は「空を駆ける足」、「頼れる護衛」、「敵を制する剣」など一度に多くのものを得た。
  • 祝いの席もそこそこに旅立っていきましたよね、天輪竜の卵サプライズ・エッグとリノさん。一緒に旅している焔の巫女はあと3人。あれ、それともう一人……何でしたっけ。
  • 希望の精霊トリクスタ。プレアドラゴンはトリクスタのためのドラゴンと言っていい。プレアドラゴンと合体してまったく新しい形態となり、より強い力を得ることができるのだ。……なぁアリウス、そろそろお前も新しい力を身につけたくはないか。
  • はぁ。(イヤな予感がする)
  • ここ暁紅院は修行僧の総本山だ。血もにじむような鍛練の果てに世に聞こえた武術の師範となった者も多い。そこで……。
  • ……。
  • 弟子を鍛えてもらうべく、特訓を申し込んできた。寺院側も総力を挙げて協力すると、快く引き受けてくれたぞ。さぁ、アリウスよ。これでお前も新しき力を得て、我が最強のボディガードに……。
  • 辞退させていただきます!僕、弱いままでいいですから!