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短編小説「ユニットストーリー」
117 龍樹篇「滅尽の覇龍樹 グリフォギィラ・ヴァルテクス」
種族 ヒュドラグルム
カード情報
「ナンディーカ!カルモダーグ!アパラジア!ドラハース!」
 天輪の巫女リノの号令で、4体の焔天えんてんの竜が飛び立った。自身と3人の焔の巫女はそれぞれこの焔天えんてんの竜の背を借りている。
 同時にリューベツァールの甲板を蹴ったのは武装鏡鳴ミラズヴェルリーナ、トリクスタと祈りの竜ブレアドラゴン装照竜グレイルミラの合身オーバードレスだ。
「リノ!すべては手筈てはず通りに。オルフィストの言葉を忘れるな!」
 甲板でドラグリッターの先頭に立つバヴサーガラが呼びかけた。リノは心友に大きく手を振ると、飛行空母のバリアの外へと一気に躍り出た。サングラスを通した視界に、空間を埋め尽くす龍樹の落胤たちと“その先にそびえるもの”が見える。
 ──!
 一体の落胤が空を疾駆する竜騎士に気が付いたようだ。
 ここは龍樹の“懐”。本陣の奥深くである。
 突然現れた“敵”に、龍樹の近衛としてはおそらく驚愕したことだろう。
 だが今、注目を集めたのはリノ達ではない。
 少し遅れて、しかもわざと目立つように、正面突破を試みる大きな一群として出撃したバヴサーガラ率いるドラグリッター隊の方である。軍隊の通常戦闘手順としては先遣隊(偵察・哨戒)→本隊=主力と出撃する。それを逆にリノたち切り込み隊を先陣=本隊とした所が、戦術家として惑星クレイの軍隊を研究しているであろう龍樹の裏をかく一手だった。
「やったね!たぶん引っかかった!」
 トリクスタ=ミラズヴェルリーナが叫ぶと、リノたちは緩く湾曲したコースで龍樹の本体へと猛烈な勢いで接近する。
 龍樹全軍の“目”がバヴサーガラ(とまもなくバリアが消滅するリューベツァール)に集中している今、この瞬間だけがリノに与えられたチャンスだった。
 世界が龍樹かそれ以外かに二分される今、リノたち惑星クレイの原住民にとって、最大の希望はニルヴァーナが龍樹の中心で“真の覚醒”を迎えることにある。ただバヴサーガラは別れる前、もうひとつの“希望”についてそっと心友リノだけに耳打ちしていたのだが、リノは今はあえて考えないようにした。まずは最善の策に集中すべきだ。
「偉大なる太陽と聖なる竜の祝福を!」
 突撃の瞬間、リノと3人の焔の巫女がニルヴァーナの祝詞を唱和した。
「ニルヴァーナ様!お力を!!」
 リノは背の天輪竜の卵サプライズ・エッグに叫んだ。
 胸に抱いているわけではないので、その表情まではわからない。
 だが、リノは文字通り背を押されているように感じていた。
 いつものように。
 龍樹が生み出したこの薄闇の異空間の中ですら、力強く生きとし生けるものを温める不屈の存在、ニルヴァーナ。
 天高く我らを照らす太陽のごとく。

Illust:かんくろう


 ──この少し前。強襲飛翔母艦リューベツァール、飛行甲板上。
 “眼”を通してそれ・・をひと目見た時、ヴェルストラは後悔した。
 何ごとにも底抜けに楽観的──少なくとも外見上は──かつ強靱な彼の精神をもってしても、目前の海上に聳えて視界を埋め尽くす巨大なの連なりと天に向かって伸びる幹、そして雲を衝く異形の首と4つの羽根らしきもの、究極の《水銀様のものヒュドラグルム》の姿はかなり意気を削ぐものだったらしい。
「ホントにあーんなのと戦うつもりなのか、リノちゃんは」
 嘆息をつきながら薄い色の入ったサングラス──仮称《柩機カーディナルの眼》──を外すと、リノは逆に今それを着けた所だった。
「はい。迷うことなど何もありません」
「うむ。オルフィストが我々にこのようなを残してゆくとはな。これで彼ら・・の意図した事もどうやら全て叶ったようだ」
 リノの隣にいるバヴサーガラも感慨深げな様子だ。バヴサーガラもまたサングラスを着けて龍樹の中心を睨んでいる。
 強襲飛翔母艦リューベツァールは今、ギーゼ=エンド湾上空、龍樹本陣の中心空域近くに侵入し、一時態勢を整えるため停止している。
 巨大化した龍樹本体とそれを囲む龍樹の落胤たちによって鉄壁の防御陣が敷かれる中を、このヴェルストラ個人所有の空母は一行を乗せ、ここまで進んできた。今、甲板にいるのはリノ、レイユ、ゾンネ、ローナの焔の巫女4人、天輪竜の卵サプライズ・エッグ、トリクスタ、グレイルミラ。そしてヴェルストラ、ラティーファ、バヴサーガラと4の竜である。他の増援は格納庫に控えていた。
 だが、ここで幾つも疑問が湧く。
 一つに、リノたちは先のオルフィスト・マスクスと異界で繰り広げた戦いで負傷したのではなかったか。
 二つ目として、龍樹は本陣の守りを固めるためと、リノたちを誘い込み物量作戦で潰すためにドラゴニア大山脈大陸の中央に戦力を集中させていた。これを強行突破することは──リノがオルフィストと立ち会うため大迂回路を取ったのはこの為で、もちろんブラントゲート船籍のリューベツァールも例外ではない──できなかったのではなかったか。
 三つ目に、リノたちにオルフィストが残した“手”とは何か。
 四つ目。最後として、そもそもギーゼ=エンド湾にある龍樹本陣は擬態され「海」または「底なしの穴」としてしか見えないはずである。それを可視のものとする《柩機カーディナルの眼》とは何か。

 話は今から3日前、リノが負傷して2日後のことになる。



「具合はどうだ、リノ」
 天輪竜の卵サプライズ・エッグを胸に抱き、焔の巫女3人に囲まれたベッドの上でリューベツァールの窓から流れる雲に視線をさまよわせていたリノは、心友の声に弾かれたように振り向き微笑んだ。
「バヴサーガラ」
「私だけ見舞いが遅れてすまない。どうしても必要な儀式があった故」
 気にしないでください、と言って同僚たちの助け起こそうとする手を拒み、リノはベッドから降り立った。
「もう良いのか」「お医者様の許可も戴いています。大丈夫です」
 希望と絶望の精霊2人、トリクスタ、トリクムーンも連れだってドアから部屋に入ってきた。
「えーっと。リノ、あのね……」「僕らから贈り物がある。起きられるのなら来てほしい」
 言い淀むトリクスタに、トリクムーンが要件をシンプルに伝えた。

 リューベツァール作戦司令室。
 もっともこの艦は軍用では無いため、ほとんどの装備は普段使われていない。
「よぉ、リノちゃん。快適に過ごせてる?欲しいものがあったら何でも言ってね」
 とヴェルストラ。ブリッツ・インダストリーCEOはトリクスタや合流した焔の巫女たちにも最高の環境を用意させていた。もちろんリノやトリクスタ、グレイルミラには最高の医者ドクターも。
「何もかもありがとうございます」
「リノちゃん、いいから。そういう改まったのやめよう。オレたちの仲じゃーん!」
 深々と頭を下げるリノに大袈裟に手を振ってみせるヴェルストラ。思わず一同からくすくすと笑いが漏れるが、謹厳でもってなるレイユだけはこの陽気な実業家(の軽すぎるノリ)を目を細めて睨んでいる。
「さっそくだが状況を整理しておきたい。贈り物の話も」とバヴサーガラ。
「贈り物?」
 首を傾げる一同に、何故かトリクスタが「まぁそれはちょっと待って」とウインクして見せた。
 一方のバヴサーガラは手慣れた様子で作戦卓の机上スクリーンを操作すると、周辺の地図を呼び出した。
「龍樹の本体はここギーゼ=エンド湾の中心にある。これは──おそらく空間を歪曲しているのであろうが──傍目にはただの海にしか見えない。接近すれば“底なしの穴”を見ることができるが……」
 腕組みをしたヴェルストラが先を引き取った。
「擬態されているのは風景だけじゃない。実はギーゼ=エンド湾そのものが巨大な龍樹の円陣になっていて──なんと!見えない敵・・・・・でいっぱいなんだとさ──オレたちが踏み込んだ瞬間、何が起きたかわからないうちにこの船ごとチュドーン撃墜ってワケ!」
 戯けているものの、言っている内容は深刻なものだ。リノたちがイメージする「突破すべき防御陣」といえば、海上で待ち構える龍樹の落胤の群れだったが、そもそも不可視なのでは戦うことすらできないのではないか。
「そこでこれ・・の出番となる」
 バヴサーガラは携えていた袋から、沢山のサングラスを卓に撒いて落とした。
「リノちゃんたちがオルフィストに追い返された時、後から調べたら甲板に変わった結晶が転がっていてさ。てっきり固まった大きな氷が引っ付いたもの──これが高い空を飛ぶ時の厄介な所でね──かと思ったんだけど、念のため分析してみたらまぁオドロキ!」
「それは異界の物質であった。しかも結晶構造が惑星クレイの地上では生成不可能なものとの分析結果。さらにこれを通すことで不可視の龍樹本陣を可視にできるとの事だった。柩機カーディナルオルフィストの置き土産であろうな」
 とバヴサーガラ。ヴェルストラは、説明の美味しい所を持って行かれたにも関わらず嬉しそうに頷いている。このCEOがリノ以外でもっとも贔屓にしているのが他ならぬ封焔の巫女バヴサーガラなのだ。
「で、サングラスにしちゃいましたー!うちのラボ優秀だからさ」
 この空母には実験室や工房もあるらしい。もともと、余計な(とも思える)機能が商品に付け加えられるのはブリッツインダストリーの特徴だ。
「ボクらのも作ってもらったんだ!もう試してみたんだけど、すごいよ。全部見える」
 とトリクスタが大小2つのサングラスを掲げて見せる。大型のものはヴェルリーナ形態仕様らしい。
「見える……まさか!」
 はっと気がついた様子のリノに、バヴサーガラがそうだと頷いた。
「異界の存在であるオルフィストがマスクスとなって敵の性質を研究し工夫して、我々でも龍樹の擬態を破ることができるとして残しておいたのだろう」
「もう一つ朗報だ。結晶自体すごく大きいものだったから、この船のレーダーとバリア発生器にも追加フィルターとして取り付けてみたんだよね。そしたら……」
 ヴェルストラが指を鳴らすと、作戦卓に竜樹の軍勢が映る一方、リューベツァールの表示は消滅した。
「これで外からオレたちの船は見えない。こっちからは敵が見えるけどね。透明人間ならぬ透明空母ってことだ」

Illust:Hirokorin


 へっへー、見えなくてインヴィジブル無敵無敵インヴィンシブル!とはしゃぐヴェルストラを睨む人間がもう一人増えた。バヴサーガラだ。大ファンを公言するバヴサーガラ自身にジト目で見られている事に、一人騒ぐヴェルストラが気づかなかったのは単なる偶然だが、このCEO、つくづく幸せな男である。
「……。とはいえその“無敵状態”にも制限はあるがな。膨大な電力を必要とするため長い時間は無理だそうだ」
「それと消えるのは姿だけだから、群れてる落胤どもにぶつかれば何かいる・・・・ってことは気づかれちまうんだ。相当な綱渡りだぜ。……ま、やるけどな、オレは」
 ヴェルストラはこの船の舵取りとしての顔に戻っていた。
 オーナーである彼は気が向けば、この巨艦の艦長・操舵・火器管制・デッキ班・機関士など船に関する限りなんでもゲーム感覚でやってしまうのである。よって、こんなやる気まんまんのヴェルストラを船の乗組員クルーが見たら近い未来に起こる修羅場──空飛ぶバイクエアーバイク並みの荒っぽい機動で空母が猪突する──を予感して震えあがっただろう。この場にリノたち関係者以外、誰もいなかったのは幸いというべきか。
「うーん、つまりこういうこと?」
 皆の頭上にぴょこんと飛び出たトリクスタが地図を順番に示していく。その指に合わせて、半透明のリューベツァールが敵で埋め尽くされたギーゼ=エンド湾に向かって行く軌跡が表示される。
「ヴェルストラが見えないこの船で、敵の隙間に突っ込む」「おう、任せとけ!」
 飛行空母が軽快に“蛇行”しながら敵を避けていく。
「時間制限があるから、なるべく中心まで素早く近づく」「速さが命だ!」
 モニターにタイム表示が追加された。カウントダウンは仮想5分である。
「で、ボクらが龍樹の本体を叩く」「頼んだぞー!」
 このサングラスをかけて、とトリクスタが突撃ポーズを取ってみせた。
「んー……」
 ここで考え込むトリクスタ。勢いよく答えていたヴェルストラが首を傾げる。
「どした、タリスマン?」
「これで、勝てるのかなぁ」「ふーむ、そうだな」
 トリクスタの横に無表情のトリクムーンも浮かんで、揃って腕組みをした。2人の掛け合いが始まる。
「オルフィストも言ってたよね、龍樹は“一生懸命なボクら“だから引っかかる罠を仕掛けてる」「あぁ策士だ」
「つまり今も、どうにかして近づこうとしてることはたぶんお見通しなんだよね」「それが妥当な線だろう」
「それと“ただ懸命に戦えば良いと信じるのは短慮”だったっけ?オルフィストは言ったんだよ」「なるほど」
 じっと俯いていたリノが顔を上げた。
「そう。“魂の中⼼にある祈りを⼤切にせよ”。それもオルフィストの言葉です」
 バヴサーガラがその手を取った。
「そこでいよいよ“決め手”の話となる。さぁ皆、甲板に来てくれ」

「ナンディーカ!カルモダーグ!アパラジア!ドラハース!」

Illust:ToMo


Illust:ToMo


Illust:ToMo


Illust:ToMo


焔天えんてんの竜。天輪の新たなる力。我が魔力の申し子だ」
 飛行甲板に激しい炎が渦巻き去ると、腕を組み胸を張るバヴサーガラの背後に屈強な祈りの竜プレアドラゴンが4、膝を折ってひざまづいていた。彼女が言っていた“儀式”の成果である。
「我が魂の祈りから、リノ、汝の“魂の中心にある祈り”へと贈るものだ。受け取ってくれ」
「やぁ!みんな、よろしく!」
 焔天えんてんの竜は無言のまま、それぞれの武器をザッと力強く掲げて返礼する。本格的な軍隊式の捧げつつに、言葉を掛けたトリクスタの方がちょっとビビッた。
 バヴサーガラが産み出した竜のうち、焔炎竜は近しく仕える忠臣としての、祈りの竜プレアドラゴンは古武士然とした者が多いが、焔天えんてんの竜はさらに寡黙な性格で課せられた任務に身を投げ打つタイプのようである。
「へへっ、実はさっき一度紹介してもらったんだけどね~」
 とトリクスタ。バヴサーガラは生真面目にそれに答える。
焔天えんてんの竜はヴェルリーナとの連携にも重きを置いている。この戦い、汝に期する所が大きい故」
「ええ。頼りにしてるわ、トリクスタ」
 とリノ。そして改めてバヴサーガラに向き直ったものの、良い言葉が出てこない。感謝も感激も溢れてしまうと声にならないものだ。ただ強く手を握るとバヴサーガラは黙って頷き、ちょうど格納庫から上がってきた竜を駆る者ドラグリッター編隊長であり“娘”であるラティーファが2人の様子を見て、これもまた満足げに微笑んだ。
 甲板に、いや全艦に警報が鳴り響いた。
「CEO!水晶玉マジックターミナルネットワークより入電!」
 こっちに回せ!と叫んだヴェルストラは、真剣な顔でしばし耳の通信機イヤーピースに指を当て、やがて一同に振り返った。
「何もかもギリギリのタイミングだったようだぜ」
 ヴェルストラは拳を握りしめた。それは燃える闘志の表れかそれとも報告に対する憤りか……。
「惑星クレイの各地であらゆる『災厄』が荒れ狂ってる。龍樹の落胤の大攻勢も始まったらしい、一斉にな」
「行きましょう、皆さん!」と天輪の巫女リノが宣言すれば、
「ドラグリッター、いつでも出られます!」
 とラティーファ編隊長も頷く。一同の意気はあがった。
 ただ一人、CEOの表情にただならぬものを感じていた人物、バヴサーガラを除いて。
「少し待ってくれ。ヴェルストラ、報告はそれだけなのか」
「いいや。もう一つ……」
 ヴェルストラはリノをバヴサーガラをトリクスタを、そして最後に天輪竜の卵サプライズ・エッグを真剣な顔で見つめて、こう言った。
「吹き荒れる『災厄』の中、攻め手の落胤どもは皆ある・・言葉を叫び、歓呼の声をあげているそうだ」
「……」
 沈黙が落ちた。リューベツァールの甲板に吹く風がにわかに冷たく厳しいものになったようだった。
「終焉の龍樹は花開き、荘厳なる惑星ほしを滅びへ導く。新しき世界の主『滅尽の覇龍樹グリフォギィラ・ヴァルテクス』、地上に降臨せり!と」

Illust:タカヤマトシアキ




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《今回の一口用語メモ》

滅尽の覇龍樹 グリフォギィラ・ヴァルテクス──龍樹 究極の姿と惑星クレイを襲う災厄の嵐
 現在、我々通常の視力による観測者には、底なしの巨大な穴(龍樹の穴)と映っているギーゼ=エンド湾の中心。それまでは異常が無いただの海と見えていたこの地点の異常は、AFG商会の貨客船《鳳凰》が(負傷していた)絶望の妖精トリクムーンを救出したことから発覚した。

 今回、焔の巫女と天輪竜の卵サプライズ・エッグ、希望の精霊トリクスタと焔天えんてんの竜※こちらは次回解説する※が挑むのが、このギーゼ=エンド湾中心、ついに究極の姿を現した「滅尽の覇龍樹グリフォギィラ・ヴァルテクス」である。
 実はこの龍樹の姿はかなり以前から、我がケテルサンクチュアリのオラクルたちに予見されていた。それは予言者や賢者たちの悪夢(以前は燃える大地の幻視──「侵蝕の烽烟」と呼ばれる──という形)にも、轟くひとつの言葉『龍樹開花・天地終焉』と、龍樹の究極形として雲を衝く巨大な姿がひと月ほど前から現れていた。
 さらに、強襲飛翔母艦リューベツァールを経由して送られてくる途中経過からすると、どうやらここまでの龍樹侵攻のすべてがこの「滅尽の覇龍樹グリフォギィラ・ヴァルテクス」の覚醒、あるいは“開花”のために仕組まれたことだったようだ。
 確かに、滅尽の覇龍樹が発現して以来、惑星クレイの各地で一斉に、今までの総量をも上回る災厄が発生し全土を危機と恐怖に陥れている。つまり、“悪意”の先兵による世界樹の偵察と襲撃(これは前哨戦だったようだ)、龍樹の仮面マスク・オブ・ヒュドラグルムによる幹部「マスクス」勧誘と結成、水銀様のものヒュドラグルムを主力とした各国への侵攻と浸透……と我々を脅かしてきた龍樹の狙いが、この「滅尽の覇龍樹グリフォギィラ・ヴァルテクス」にあったのだとしたら、せっかく集めた精鋭マスクスの実質的な解散も、各地で続く敗退にもかかわらず、龍樹側の陣容には大きな動揺が見られなかったのも頷ける。

 さて、肝心の対龍樹への切り札について。
 まだ決着がついていない為、ここでは詳しく触れることはできないが、天輪の巫女リノに対して封焔の巫女バヴサーガラから秘策が授けられたようである。バヴサーガラの先見性と大盤振る舞いは今に始まったことではないが、世界の危機に際して今回もまたその準備が間に合ったことには感服するしかない。そして我々として今できる事といえば、天輪と封焔に導かれし抵抗軍の健闘を祈るのみである。

シャドウパラディン第5騎士団副団長/水晶玉マジックターミナル特設チャンネル管理配信担当チーフ
厳罰の騎士ゲイド 拝


追伸:なお「龍樹」については今後、独自ルートでギーゼ=エンド湾中心近くに潜入している、知の探求者セルセーラからもレポートが提出・共有される予定である。


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「龍樹の穴」発見の経緯については
 →ユニットストーリー104「侵蝕の烽烟」を参照のこと。

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本文:金子良馬
世界観監修:中村聡