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ユニット

Unit
短編小説「ユニットストーリー」
243「業炎竜皇 ヴィルベイル・ケーニッヒ」
ドラゴンエンパイア
種族 フレイムドラゴン


Illust:かんくろう


 帝国においてドラゴンは戦車であり戦闘機であり、そして攻撃機でもある。
 業炎竜 ヴィルベイル・ドラゴンは地上から立ち昇る黒煙を横目に、強く羽ばたいて旋回軌道に入った。砦はヴィルベイルの炎によって一直線に焼かれ、その塁壁は崩れ落ちていた。
 地上からの矢弾はいずれも厚い甲皮に弾かれ、ヴィルベイル隊の攻撃行程を脅かすものではない。
「この高度ではな」
 だが目標ターゲットの砦を完膚なきまでに破壊し、抵抗力を奪うには、あと一つ決め手が欲しい。攻撃隊として求められる成果は撃破ではなく殲滅せんめつである。
 地上には警戒とこの後の掃討に備え、ジセン、ジョウコウ、アズハールらが詰めている。辺境の小鬼ども相手に遅れを取ることはない。
 しかし戦闘とは常に心身と物量、エネルギーの削り合い。膠着は悪、圧勝は正義なのだ。
『自分が突っ込みます!』


Illust:ケセルム


 僚機として後ろについていたクリメイトヴァルス・ドラゴンが通信をよこす。
 ヴィルベイル・ドラゴンは翼を立てるだけで「待て」と一蹴した。
 大規模な戦争など絶えて久しいこの天輪聖紀でそれほどの闘志を燃やせる気概は買うが、活きの良い戦士が命を張るべき相手ではない。さらに言えば、火竜クリメイトヴァルスの特性は“極大の炎熱が、埋葬の華と燃ゆる”、つまり敵の抵抗を奪う止めの一撃に適しているのだ。
 それに一つ試してみたいことがあった。
「オレがやる。皆退がれ」
 全隊あてに一言告げて、隊長機である炎の竜フレイムドラゴンは高度を下げた。
 普段の緩降下ではない。急降下である。
 聞こえるのは重い空気の層を、我が身が切り裂いてゆく音だけ。
 熱を帯びた外皮には白い霧状の渦コンデンセーション・クラウドが生じる。
 地上班が息を飲むのが感じられる。敵もまた。
 当のドラゴンに恐れはなかった。はるか先祖からこの山岳地帯で、帝国を脅かす内外の敵を滅ぼしてきた竜一族である。戦いは本能だった。
 みるみる地上が迫り、激突しようかという寸前……。
 その言葉は魂の奥底から生じた。
「渦巻き貫け、殲滅の業火!バーニング・パーディション!」
 うろたえ騒ぐ小鬼たちが砦とともに消炭と化した時、新たな姿を得た炎の竜フレイムドラゴンが上空へと真っ直ぐに飛び上がった。地上で突撃に備えていたドラグリッター ナジュラ、アサーラ、スフヤーンからも感嘆と奮起の叫びがあがる。
 頭から尾の先までさらに厚く硬く覆われた甲皮、鋭さを増したフォルム、より致命的な熱量と破壊力を得た体内の業炎。その範囲もまた“線”ではなく広い“面”の破壊だ。
 業炎竜皇ごうえんりゅうおう ヴィルベイル・ケーニッヒ。
 それはヴィルベイル隊長があえて命を賭けて掴み取った、新たな『かげろう』の尖兵の姿だった。



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<ユニット紹介>
業炎竜皇 ヴィルベイル・ケーニッヒ
 ヴィルベイル・ケーニッヒは、業炎竜 ヴィルベイル・ドラゴンの進化型として、
 ①攻城戦や地上殲滅のため、吐き出す業炎と飛行速度を増加させるために体内のエネルギー備蓄量を増加
 ②地上からの対空攻撃にもより耐えられるように、装甲である外皮を強化
 させたものである。
 惑星クレイの住民は、その成長や進化、装備変更、あるいは役職や立場などでその姿や名称が変化する。
 その変化は(鍛練など)意図して行われるものもあれば、危機を克服し、進化の機会に挑み乗り越えることで無意識にもたらされる事もある。
 今回のヴィルベイル・ケーニッヒの場合はこれらの複合といえるだろう。
 ドラゴンエンパイア軍の先鋒として、あるいは山岳の猛竜として、よりつよはやくありたいと願う気持ちがヴィルベイルをもう一段上の存在へと引き上げたのだ。

《惑星クレイ ワールドガイド&参考ユニットストーリー》
ドラゴンエンパイア帝国軍の編成と特徴/天輪聖紀
 惑星クレイ最大の軍事国家であり、広大な国土を有するドラゴンエンパイアには5つの軍団がある。
 第1軍『かげろう』
 :フレイムドラゴンを中核とする攻撃部隊。圧倒的な火力により天空を支配する。
  なお、竜のほとんどが休眠していた無神紀には消失していたかげろうの竜騎士は、
  現在「ドラグリッター」として復活を遂げている。
 第2軍『なるかみ』
 :サンダードラゴンを中核とする。雷を思わせる機動力を持ち、電撃戦を得意とする。
  数千年の歴史しかない若い部隊であるためか、かげろうへの対抗心や野心を示す、
  喧嘩っ早い将もいるようだ。
 第3軍『たちかぜ』
 :ディノドラゴン恐竜を中核とする。火力と重量を叩きつけ戦線を蹂躙する地上軍である。
  空を支配する花形ではないが、拠点を制圧し、勝敗を決するのは我ら陸軍であるという自負があり、
  武骨で堅実な将が多い。
 第4軍『ぬばたま』
 :アビスドラゴンを中核とする。闇に潜み夜を支配する強行偵察部隊である。
  情報戦は戦いの勝敗を大きく左右する。魔法・科学ともに精通するぬばたまの兵は、
  犠牲を顧みず、異界勢力にすら偵察や夜襲をこなす。
 第5軍『むらくも』
 :アビスドラゴンを中核とする。他国に潜伏し、得られた情報と共に生還する諜報部隊である。
  天輪聖紀では、戦時の偵察や夜襲を専門とするぬばたまと、
  他国への潜伏やスパイ活動を任務とするむらくもに役割分担している。

 なお各軍の元となったドラゴンエンパイアの武力集団については
 →世界観コラム ─ 解説!惑星クレイ史 第5章 弐神紀前期 ~神格「創世神メサイア」と魔法科学文明~
 を参照のこと。

 業炎竜 ヴィルベイル・ドラゴンについては
 →ユニットストーリー242「業炎竜 ヴィルベイル・ドラゴン」
 を参照のこと。

 ドラゴンエンパイアのドラゴンについては
 →ユニットストーリー196「水鱗の武僧 リュウトウ」
 を参照のこと。

 ドラゴンエンパイアの政治体制、竜皇帝と皇位継承については
 →ユニットストーリー206「荒牙之衆 ディナバラダ」《今回の一口用語メモ》
 の中で触れられている。

 惑星クレイの重力が地球よりも強いことについては
 →168 「波動の聚合 グリッチエピセンター」
 に記述がある。

 惑星クレイの住民の姿と名称が変化すること、またその経緯や成長後の違いについては
 →ユニットストーリー183 朔月篇第8話「魔宝真竜 ドラジュエルド・イグニス」
  ユニットストーリー184 朔月篇第9話「樹角獣皇 マグノリア・パトリアーク」
  ユニットストーリー187 朔月篇第12話「零から歩む者 ブラグドマイヤー・ネクサス」
  ユニットストーリー212 赫月篇第11話「救護の翼 ソエル」
 等でも描かれている。

 天輪聖紀において、国家間の緊張関係が大規模戦闘まで発展した例が無いことについては
 →ユニットストーリー076 龍樹篇「砂塵の雷弾 サディード」
 でも触れられている。(上記はドラゴンエンパイアとダークステイツの場合)

 ★ドラゴンエンパイア版図(国家色分け/主要地名入り)最新版



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本文:金子良馬
世界観監修:中村聡