ユニット
Unit
短編小説「ユニットストーリー」
246「魔獄竜帝 ファヴルニール」
ダークステイツ
種族 アビスドラゴン
魔獄。ファヴルニールの玉座の間に通されたあなたはきっと、想像を裏切られるだろう。
そこは地名から想像できるような「魔物が封じられた光なき監獄」ではないからだ。
王宮の回廊としては暗く狭い岩穴、要所を固める番兵詰め所──これらは言うまでもなく攻められた時に敵兵が大挙して押し寄せないための備えだ──を下り続けると、突如として現れるのは、まばゆいばかりに明るい大ホールだ。
「ファヴルニール!ファヴルニール!」
耳を聾するシュプレヒコール。
唱えるのはデーモン、アビスドラゴン、人間、キメラなど。言葉なき者は吠え声で主の名を称えている。
玉座の間が光に溢れているのは、広間の中央に山となった岩石が明かりを反射するからだ。
脈打つ黄金。それは金の原石。高く積まれた財宝の頂に彼がいる。
魔獄竜帝 ファヴルニール!

Illust:touge369
いや正確にいえば違う。
仇敵との全面衝突を経て、その名はさらに至高を指すものに変わっている。
魔獄竜大帝 ファヴルニール・ラインゴルト!
魔獄竜帝である時のファヴルニールの鬨の声を知っているだろうか。
『貴様も、我が内で眠れ――堕落黄金・黒血流転!』
古語のライン=流れ、激流という句がその口から出ていたことは、この時からすでに魔獄竜大帝たるファヴルニールへの昇華は運命づけられていたのかもしれない。

Illust:touge369
ここで魔獄竜大帝の威厳と、莫大な黄金の山、魔獄軍団の喚声に茫然としていると、魔獄棘臣ミルメスのツタが腕を引くのを感じる。
「ほら、謁見の時間だよ。頑張って!」
食われちゃわないようにね♡という続きの言葉は聞こえなかったことにしよう。
目の前にはもう、魔獄竜大帝の決戦用兜を預かる栄誉を帯びた深淵の竜が恐ろしげな白骨の槍を携えてやってきて、荒っぽくあなたを掴むと御前に引っ立てるからだ。

Illust:Moopic
「我等を恐れるは道理。故に無様とは言うまいよ」
エイギスヴェルム・ドラゴンの言葉には凄みと憐れみが感じられる。
ファヴルニールと魔獄軍団の前では、個人のちっぽけな野望や企みなど皆かき消されてしまうのだろう。
『我のために生き、我のために死せよ』
呪われし黄金の山(あなたはかつてポルディーム大島に置かれていた伝説の黄金が、故郷を追われたファヴルニールと共にこの魔獄に置かれ、ケテルサンクチュアリ剣聖騎竜団につけ狙われていることを知っている)の前に平服していたあなたは、その声に恐る恐る見上げる。
頂きに座す魔獄竜大帝 ファヴルニール・ラインゴルトは、魔獄の王。
ケテルに奪われし領土に対する執念の攻勢と、脅かされる財宝の死守。
その両方に至高の力を示し続けているからこそ、ファヴルニールはダークステイツ西方の雄として崇められ、魔獄軍団は鉄の結束を誇るのである。
『我のために生き、我のために死せよ』
問いは2度目。3度目はあるまい。
さて。
一人で魔獄の岬に立ち、ミルメスに導かれ、アルヴェリッヒの咆哮を聞き、そして偉大なるファヴルニールの声を聞いた。ここまで無事でいるあなたは間違いなく生粋のダークステイツ国民だろう。
人間か、悪魔か、アビスドラゴンか、キマイラか。だが種族は問題ではない。
魔獄竜大帝の忠実なる臣下、勇敢な兵士として血湧き肉躍る戦いの中に身を投じるか、それとも弱き者として日陰で怯えるだけの存在に甘んじるか。大事なのはどの道を選ぶかだ。
闇の国ダークステイツでは“力こそ正義”。
魔獄は門を開き、あなたの決断を待っている。
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《惑星クレイ ワールドガイド&参考ユニットストーリー》
魔獄──その位置と歴史
魔獄とは何か。
ひと言でいうならばそれは、ダークステイツに名高い竜ファヴルニールが治める地、となる。
対岸に位置するのがグラムグレイス率いるケテルサンクチュアリ剣聖騎竜団。
両者は、ポルディーム水道を挟んで睨み合う宿敵同士である。

ポルディーム大島は天輪聖紀以前、ダークゾーン領であり地名も違っていた。
ファヴルニールは元々、この島で悪名を馳せていたドラゴンである。旅人を捕らえて殺し、グニダルヘイズと呼ばれる土地に犠牲者から奪った宝を貯め込んでいた。
一方、ケテルサンクチュアリは、もっとも国力が減衰した無神紀に唯一成功した領土拡張がこのポルディーム大島であり、ケテル本土をも度々脅かしていたファヴルニール討伐だった。
このとき悪竜退治に派遣されファヴルニールを対岸のダークステイツ領へと追放したのが、剣聖騎竜団を率いたコスモドラゴン、グラムグレイス。討伐の成功と現ポルディーム大島の奪取は、希望なき無神紀のケテルに稀な国民的高揚と絶賛、剣聖騎竜の名を大いに高めたが、ファヴルニール自身と彼の宝は取り逃す結果となった。
それ以来、ファヴルニールはグラムグレイスへの報復を誓い、魔獄竜帝を名乗って常にポルディームの島とケテルサンクチュアリを脅かす勢力となった。剣聖騎竜グラムグレイスもまた“翔”の名を帯びる配下の騎士たちと共に、魔獄からの襲撃に備え、いつの日かファヴルニールを倒すべく最前線の防人となったのだ。
なお、“力こそ正義”のダークステイツではこうした自治領は多く、魔皇帝を頂点とする国家としての大枠の下、各地方は魔王が治める小国家レベルのものから孤島まで、規模も統治の厳しさも様々である。
こうした自治領の一つとして迅骸魔境がある。
→ユニットストーリー100 龍樹篇「迅骸魔境の闘戦鬼」を参照のこと。
また、魔獄という言葉から想像されがちな「(手に負えない)魔物が封じられた監獄」としては、ドラゴンエンパイア最古の監獄である『マグナプリズン』が挙げられる。
→シヴィルト サイドストーリー「スペロドとシヴィルト」を参照のこと。
惑星クレイの住民の姿と名称が変化すること、またその経緯や成長後の違いについては
→ユニットストーリー183 朔月篇第8話「魔宝真竜 ドラジュエルド・イグニス」
ユニットストーリー184 朔月篇第9話「樹角獣皇 マグノリア・パトリアーク」
ユニットストーリー187 朔月篇第12話「零から歩む者 ブラグドマイヤー・ネクサス」
ユニットストーリー212 赫月篇第11話「救護の翼 ソエル」
ユニットストーリー243「業炎竜皇 ヴィルベイル・ケーニッヒ」
等でも描かれている。
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そこは地名から想像できるような「魔物が封じられた光なき監獄」ではないからだ。
王宮の回廊としては暗く狭い岩穴、要所を固める番兵詰め所──これらは言うまでもなく攻められた時に敵兵が大挙して押し寄せないための備えだ──を下り続けると、突如として現れるのは、まばゆいばかりに明るい大ホールだ。
「ファヴルニール!ファヴルニール!」
耳を聾するシュプレヒコール。
唱えるのはデーモン、アビスドラゴン、人間、キメラなど。言葉なき者は吠え声で主の名を称えている。
玉座の間が光に溢れているのは、広間の中央に山となった岩石が明かりを反射するからだ。
脈打つ黄金。それは金の原石。高く積まれた財宝の頂に彼がいる。
魔獄竜帝 ファヴルニール!

Illust:touge369
いや正確にいえば違う。
仇敵との全面衝突を経て、その名はさらに至高を指すものに変わっている。
魔獄竜大帝 ファヴルニール・ラインゴルト!
魔獄竜帝である時のファヴルニールの鬨の声を知っているだろうか。
『貴様も、我が内で眠れ――堕落黄金・黒血流転!』
古語のライン=流れ、激流という句がその口から出ていたことは、この時からすでに魔獄竜大帝たるファヴルニールへの昇華は運命づけられていたのかもしれない。

Illust:touge369
ここで魔獄竜大帝の威厳と、莫大な黄金の山、魔獄軍団の喚声に茫然としていると、魔獄棘臣ミルメスのツタが腕を引くのを感じる。
「ほら、謁見の時間だよ。頑張って!」
食われちゃわないようにね♡という続きの言葉は聞こえなかったことにしよう。
目の前にはもう、魔獄竜大帝の決戦用兜を預かる栄誉を帯びた深淵の竜が恐ろしげな白骨の槍を携えてやってきて、荒っぽくあなたを掴むと御前に引っ立てるからだ。

Illust:Moopic
「我等を恐れるは道理。故に無様とは言うまいよ」
エイギスヴェルム・ドラゴンの言葉には凄みと憐れみが感じられる。
ファヴルニールと魔獄軍団の前では、個人のちっぽけな野望や企みなど皆かき消されてしまうのだろう。
『我のために生き、我のために死せよ』
呪われし黄金の山(あなたはかつてポルディーム大島に置かれていた伝説の黄金が、故郷を追われたファヴルニールと共にこの魔獄に置かれ、ケテルサンクチュアリ剣聖騎竜団につけ狙われていることを知っている)の前に平服していたあなたは、その声に恐る恐る見上げる。
頂きに座す魔獄竜大帝 ファヴルニール・ラインゴルトは、魔獄の王。
ケテルに奪われし領土に対する執念の攻勢と、脅かされる財宝の死守。
その両方に至高の力を示し続けているからこそ、ファヴルニールはダークステイツ西方の雄として崇められ、魔獄軍団は鉄の結束を誇るのである。
『我のために生き、我のために死せよ』
問いは2度目。3度目はあるまい。
さて。
一人で魔獄の岬に立ち、ミルメスに導かれ、アルヴェリッヒの咆哮を聞き、そして偉大なるファヴルニールの声を聞いた。ここまで無事でいるあなたは間違いなく生粋のダークステイツ国民だろう。
人間か、悪魔か、アビスドラゴンか、キマイラか。だが種族は問題ではない。
魔獄竜大帝の忠実なる臣下、勇敢な兵士として血湧き肉躍る戦いの中に身を投じるか、それとも弱き者として日陰で怯えるだけの存在に甘んじるか。大事なのはどの道を選ぶかだ。
闇の国ダークステイツでは“力こそ正義”。
魔獄は門を開き、あなたの決断を待っている。
了
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《惑星クレイ ワールドガイド&参考ユニットストーリー》
魔獄──その位置と歴史
魔獄とは何か。
ひと言でいうならばそれは、ダークステイツに名高い竜ファヴルニールが治める地、となる。
対岸に位置するのがグラムグレイス率いるケテルサンクチュアリ剣聖騎竜団。
両者は、ポルディーム水道を挟んで睨み合う宿敵同士である。

ポルディーム大島は天輪聖紀以前、ダークゾーン領であり地名も違っていた。
ファヴルニールは元々、この島で悪名を馳せていたドラゴンである。旅人を捕らえて殺し、グニダルヘイズと呼ばれる土地に犠牲者から奪った宝を貯め込んでいた。
一方、ケテルサンクチュアリは、もっとも国力が減衰した無神紀に唯一成功した領土拡張がこのポルディーム大島であり、ケテル本土をも度々脅かしていたファヴルニール討伐だった。
このとき悪竜退治に派遣されファヴルニールを対岸のダークステイツ領へと追放したのが、剣聖騎竜団を率いたコスモドラゴン、グラムグレイス。討伐の成功と現ポルディーム大島の奪取は、希望なき無神紀のケテルに稀な国民的高揚と絶賛、剣聖騎竜の名を大いに高めたが、ファヴルニール自身と彼の宝は取り逃す結果となった。
それ以来、ファヴルニールはグラムグレイスへの報復を誓い、魔獄竜帝を名乗って常にポルディームの島とケテルサンクチュアリを脅かす勢力となった。剣聖騎竜グラムグレイスもまた“翔”の名を帯びる配下の騎士たちと共に、魔獄からの襲撃に備え、いつの日かファヴルニールを倒すべく最前線の防人となったのだ。
なお、“力こそ正義”のダークステイツではこうした自治領は多く、魔皇帝を頂点とする国家としての大枠の下、各地方は魔王が治める小国家レベルのものから孤島まで、規模も統治の厳しさも様々である。
こうした自治領の一つとして迅骸魔境がある。
→ユニットストーリー100 龍樹篇「迅骸魔境の闘戦鬼」を参照のこと。
また、魔獄という言葉から想像されがちな「(手に負えない)魔物が封じられた監獄」としては、ドラゴンエンパイア最古の監獄である『マグナプリズン』が挙げられる。
→シヴィルト サイドストーリー「スペロドとシヴィルト」を参照のこと。
惑星クレイの住民の姿と名称が変化すること、またその経緯や成長後の違いについては
→ユニットストーリー183 朔月篇第8話「魔宝真竜 ドラジュエルド・イグニス」
ユニットストーリー184 朔月篇第9話「樹角獣皇 マグノリア・パトリアーク」
ユニットストーリー187 朔月篇第12話「零から歩む者 ブラグドマイヤー・ネクサス」
ユニットストーリー212 赫月篇第11話「救護の翼 ソエル」
ユニットストーリー243「業炎竜皇 ヴィルベイル・ケーニッヒ」
等でも描かれている。
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本文:金子良馬
世界観監修:中村聡
世界観監修:中村聡