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短編小説「ユニットストーリー」
247「翔鋭の騎士 エアドフリス」
ケテルサンクチュアリ
種族 ヒューマン


Illust:TOH.


「魔獄の兵よ。黄金きんの夢をいだいて眠れ」
 青白く輝く突剣に刺され海面に墜ちる名も無き悪魔デーモンに、ケテルの騎士は手向けの言葉を呟いた。
 初夏の正午。戦場には今日も大きな積雲が湧いている。
 ポルディーム水道の空は強い風と潮の転流によって、目まぐるしく変化するのだ。
 剣を体側に下げ、捧刀の姿勢をとる翔鋭の騎士 エアドフリスは人間ヒューマンの騎士。
 海面から牙のように突き出た石柱の頂で、彼は静かに次の敵を待っている。端正な顔と油断のない視線を対岸の闇の国に向けたまま。


Illust:モレシャン


「空に異常が無いか、こいつで調べるのさ!こんな風に!」
 一方、巨大な打診器ハンマーを“空に打ち込んでは移動する”翔看天使 パルジエルの動きは華々しい。
 剣聖騎竜団の監視網をかいくぐろうと迫る透明化した敵に対し、激しく叩き込まれるハンマーによって生じる衝撃と神聖魔術波動がその姿を炙り出し、ダメージを与える。
 ドーン!!
 今、また一体のキメラが可視化し、空間識失調に陥った──要するに目を回したのである──魔獄の兵は落下し、待ち構えていたエアドフリスの突剣に貫かれた。
「空より降りて海の泡と消える。もって瞑すべし」
 鋭鋒が曇天を衝き、空は蒼く冴え渡る。
 エアドフリスの呟きは騎士らしく、斃れた敵への敬意がこめられていた。それは凶暴な魔獣キメラであっても変わらない。
 また上空にパルジエルのハンマーが打ち込まれ、エアドフリスは哲学者を思わせる厳粛な面持ちで突剣を構え直した。
 彼らにとって生とは限りなき闘争の繰り返し。死はいつか訪れるその終焉である。
 そこにはひたすらに強い任務とリーダーへの忠誠、剣士として飽くなき自己鍛練の道だけがある。


Illust:騎劉たかひさ


「飛び続けるのよ!もっと高くへ!」
 増援に駆けつける翔風の運び手 ラクチェは、騎乗するスズメバチ(シルフたちにとってこうした大型の昆虫は絶好の乗り物なのだ)をき立てる。ラクチェの勇気と団に捧げる思いの強さは、その愛らしい外見からは計れない。
「行きましょう!蒼き空の遥か高みへ!」
 そのラクチェを後方から包み込むように援護し、励ますように飛んでいるのは翔斬の騎士 エスメレ。
 金髪と銀のケープ。いずれもが空を飛ぶエスメレの後方に長くなびいている。


Illust:ばにら


 全速力で飛ぶ彼女たちの視線の先、先鋒の2人エアドフリス、パルジエルに追いつくまではあと少し。
 陽は高く、海は青く、風強く、行く手には迫りくる魔獄の闇。
 最前線の午後は、まだ始まったばかりだ。

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<ユニット紹介>
 翔鋭の騎士 エアドフリス
 ケテルサンクチュアリ、天上生まれ。18歳男性、人間ヒューマン。ロイヤルパラディン。
 剣聖騎竜団所属。隊きってのインテリであり突剣の名手。
 謹厳実直で自己練磨に余念がない、実にケテルサンクチュアリの騎士らしい性格。宿敵である魔獄軍団との戦いにおいても、対峙し、倒した敵に対して剣士として礼を欠くことはない。
 神聖魔術による飛行は可能だが(それは必要最低限に留め)、あえて足場を確保した地上または低空戦で一撃必殺を狙う。

 翔看天使 パルジエル
 ケテルサンクチュアリ、天上生まれ。(人間でいう)20歳。男性、エンジェル。ロイヤルパラディン。
 剣聖騎竜団所属。
 医術を修めエンジェルフェザーの資格も持っているが、強い闘志と攻撃意識のため、騎竜団では後述の戦闘サポートにまわる機会が多い。
 (本編にもある通り)武器であるハンマーをまるで「たたき網漁」の打ち手のようにふるって敵の姿を暴き、迎撃する騎士たちの元へと追い込むという“透明化した魔獄の先兵”への対応や、“水道(狭い海峡)を挟んだ最前線”に最適の戦術の一角を担っている。
 なお同じ天使の翔明の騎士 リモールとは騎竜団の同期であり、「たたき網漁」戦術以外にも息の合った連携を見せる。
 →翔明の騎士 リモールについては次回のユニットストーリーを参照のこと。

 翔風の運び手 ラクチェ
 ケテルサンクチュアリ、地上生まれ。(人間でいえば)15歳くらい。女性、シルフ。ロイヤルパラディン。
 剣聖騎竜団にはポルディーム南部の現地募集に参加し試験に合格して入団している。
 武器は反りの入った短剣。
 ラクチェはシルフとして翼を持ち、飛行することもできるが、剣聖騎竜団の騎士としては大型のスズメバチを“愛機”としている。彼は高い知性を持ち、甲冑を身にまとい毒針の一刺しを得意とする「武装スズメバチ」として(航空)戦力の一端を担い、ラクチェと息の合ったコンビネーションを見せる。

 翔斬の騎士 エスメレ
 ケテルサンクチュアリ、天上生まれ。(人間でいう)19歳。女性、エルフ。ロイヤルパラディン。
 剣聖騎竜団所属。武器は神聖魔術が付与されたハルバート。突斬一体のこの槍で魔獄の敵に対抗する。
 エスメレがエルフでありながら自在な飛行を可能としているのは、その肩につけられたケープ(その長さはマントといってもよいもの)だ。先が翼の形になっているエスメレのケープもまた神聖魔術がかけられており、飛行能力を与えるだけではなく、戦闘では知性ある生き物のように独自に動いて着用者の身を守る。


剣聖騎竜団が戦う相手、魔獄側の戦う理由と目的、士気の高さについては
 →ユニットストーリー246「魔獄竜帝 ファヴルニール」
 を参照のこと。

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本文:金子良馬
世界観監修:中村聡