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短編小説「ユニットストーリー」
248「翔勢の騎士 ウェルムンド」
ケテルサンクチュアリ
種族 ヒューマン



 ポルディームの地において、黄金はくすぶり消えぬ闘争の熾火おきび
 魔獄の兵は海流と共に押し寄せ、騎士ナイトたちは風を背負い、潮目を読んでこれにあらがう。
 深夜の前線司令部。
 翔明の騎士 リモールは卓に広げられた地形図を見ながら、目を細めた。
 我ら剣聖騎竜団(ケテルサンクチュアリ側)の上空を東から西に吹くのがポルディーム海峡風。強弱の変化が激しく、この風を読む力と経験が戦いの有利/不利を分ける。地図に青く描かれた矢印だ。
 一方、敵側(魔獄半島)の沖を流れるのがポルディーム潮流。赤い矢印が示す通り、朝晩でその流れが逆になるため、海上戦力にとっては攻めづらく守りやすい天然の要害となっている。
「我々は噛み合い、激しく火花を散らす歯車のよう」
 闇を裂く、光差す晴天の剣。
 リモールの輝く剣筋を称える言葉だ。
 だが今の言葉を聞けばリモールが剣士だけではなく、戦場全体をイメージし、司令官の下で戦力を適宜配分・配置していく参謀の才能にも恵まれていることがわかる。


Illust:辰馬大助


「そしてこの狭い海峡──ポルディーム水道──の風と潮流は、戦場自体を変化させ駆動させる潤滑油であり、舞台装置というわけだ。限定された盤上にこれほど複雑な要因が絡む戦域は少ない」
 戦略評を引き取った翔勢の騎士 ウェルムンドは、敬礼しかけるリモールを制して地図の対面に立った。
 エルフ特有の若々しい外見。しかし厳しい表情と深い思慮が窺える瞳が、戦士として指揮官としての豊かな経験を物語っている。
 “風は高く――我等が方へと吹いております。”
 かつて司令官グラムグレイスに作戦計画を尋ねられた時、ウェルムンドが答えた言葉と彼が執った指揮は団の語り草となっている。
 その日の戦いでは風に乗った航空部隊が、魔獄のを抑え続けて完勝したのである。


Illust:キリタチ


「条件はどうあれ我々は国境を侵す悪と戦うだけです。本日も良きご指示を、参謀がた」「そう。俺たちは力いっぱい戦うだけ。栄えある剣聖騎竜団の勝利のためにね」
 司令部の入口からかかった声は翔鎌の騎士 ダヴン、翔槍の騎士 グウィンサウ。
 夜間出撃前の挨拶だ。
 踵を合わせて出撃の礼をする2人に、ウェルムンド、リモールも答礼して声を合わせる。
「グラムグレイス!ジーク勝利を!」
 それは彼らが悪に抗して掲げられる聖剣の名であり、旗印であり、戦地の名称、そして軍団長の名でもある。グラムグレイスの名が叫ばれる度、剣聖騎竜団は危地を脱し、士気は上がり、攻勢はいよいよ盛んとなるのだ。
 そしてまた今、
「悪辣なる者よ。断罪の刃を受けるがいい!」ダヴンが叫び、
「騎竜の咆哮響けし戦場に、敗北はありえない」グウィンサウも叫んだ。
 司令部に残されたのは、出撃していく騎士たちの闘気と神聖魔術の余波が巻き起こす烈風。
 そして彼らの武運長久を、つまりは奮闘と無事という相反する望みを、祈る参謀2人。
 実戦部隊、剣聖騎竜団は常在戦場。
 勝利と敗北。領有と黄金。忠誠と栄誉。全ては混沌として表裏一体のものなのだ。
 その戦場をケテルでは剣聖勝利の地グラムグレイス・ジークと呼び。ダークステイツでは魔獄と呼ぶ。
 そして今、司令部から2人の騎士が最前線へと飛び立った。いつ果てるとも知れない戦いの場へ。

 ポルディームの海に、今宵の闇もまた深い。

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<ユニット紹介>

 翔勢の騎士 ウェルムンド
 剣聖騎竜団所属。
 ケテルサンクチュアリ、天上生まれ。(人間でいう)18歳。男性、エルフ。ロイヤルパラディン。
 グラムグレイス麾下きかの優れた前線指揮官として知られる。
 若々しい外見の美男だが、エルフとして人間よりも長い経験と実戦を積んでおり、その知見と地勢を熟知し己が味方とする戦略勘は、剣聖騎竜 グラムグレイスに直接意見を求められるほど。
 剣士としても凄腕であり、神聖魔術を付与された長剣での十文字切りで魔獄の兵を圧倒する。

 翔明の騎士 リモール
 剣聖騎竜団所属。
 ケテルサンクチュアリ、天上生まれ。(人間でいう)17歳。女性、エンジェル。ロイヤルパラディン。
 晴天の剣と称される彼女の武器は神聖魔術で鍛えられたもので、ダークステイツの魔物や悪魔デーモンに対抗するのにも最適である。また本編にもある通り、戦闘だけでなく司令官グラムグレイスにも通じる参謀の一員としても優れた才能と戦略眼をもっている。
 翔看天使 パルジエルとは騎竜団の同期であり、リモール自身が出撃した際には彼のハンマーによる「たたき網漁」戦術に協力し、息の合った連携を見せる。

 →翔明の騎士 リモールについては前回の
 ユニットストーリー247「翔鋭の騎士 エアドフリス」を参照のこと。


Illust:つくねね


 翔鎌の騎士 ダヴン
 ケテルサンクチュアリ、天上生まれ。20歳男性、人間ヒューマン。ロイヤルパラディン。
 剣聖騎竜団所属。
 その名前の通り戦鎌の使い手。単独でも優れた戦士だが味方の攻勢と連動した掃討を得意としている。
 普段は穏やかな性格と物言い、気配りの細かさで仲間からの信頼も厚いダヴンだが、
 魔獄の手勢に対しては峻烈なまでの闘志で大鎌を振るう。
 これは以前、戦友を魔獄兵に殺されたためで、以来、彼にとって魔獄に連なる者は倒すべき悪でしかない。


Illust:在由子


 翔槍の騎士 グウィンサウ
 ケテルサンクチュアリ、地上生まれ。20歳男性、人間ヒューマン。ロイヤルパラディン。
 細身の体格に似合わぬ重い槍を振り回して敵を倒す。
 剣聖騎竜団にはポルディーム南部の現地募集に参加し試験に合格して入団。自信家でよく軽口を叩く。
 地元の貧しい農家生まれで「食うために騎士になった」「オレの得意は突撃だけ」を公言する。
 実際、神聖魔術が付与されたグウィンサウの槍は、その初撃がもっとも戦果をあげることでも有名で、
 全身を包むロイヤルパラディンの甲冑は、命知らずのグウィンサウのためにグラムグレイスが与えたものだ。


剣聖騎竜団と剣聖騎竜 グラムグレイス(剣聖騎竜皇 グラムグレイス・ジーク)については次回、
 →ユニットストーリー249「剣聖騎竜 グラムグレイス」
 を参照のこと。

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本文:金子良馬
世界観監修:中村聡