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短編小説「ユニットストーリー」
249「剣聖騎竜 グラムグレイス」
ケテルサンクチュアリ
種族 コスモドラゴン
 無神紀、中期。
 ケテルサンクチュアリが建国されて間もなくのことである。
 後にポルディーム大島だいとうと呼ばれる地に、ファヴルニールという巨大な竜がいた。
「死か。黄金か」
 ファヴルニールはこう問いかけながら、グニダルヘイズの荒野で住民や旅人の財産を奪い、持たざる者は命を奪った。その恐怖の支配は島のほぼ全域に及び、大魔竜島とも呼ばれていたという。
 当時この島はダークゾーン(後のダークステイツ)国に属していたが、ケテル本国に隣接する土地として、商人や旅人などケテルサンクチュアリの民にも少なからぬ被害が及び、国境の緊張も急速に高まっていた。
「我、魔竜駆逐のくさびとならん」
 剣聖騎竜 グラムグレイスは誇り高きロイヤルパラディンの騎士竜。騎士団を率いるだけの技量と資格を持っていたが彼はあえて単身この島におもむくと、その正体を隠し、悪竜ファヴルニールを倒すための方法を模索し始めた。


Illust:安達洋介


 敵地でファヴルニールの弱点を探るうちグラムグレイスは、いかなる騎士も魔獣も、かの悪竜を倒せず、貯め込んだ黄金も奪えない理由を知ることになった。
 それは“血の呪い”だ。
 ファヴルニールは黄金を貯め込み、その上で眠るようになってから体質が変化していた。
 息と黒い血液は強烈な毒を帯び、そのおもては敵意あるものに恐怖を与え、そして鱗自体がまるで鉱石のような硬さと厚みを帯びるようになったのだ。
「ならば毒をもって毒を制するのみ」
 グラムグレイスは、(力こそ正義であるダークゾーン国の基準からみても手が付けられない)暴君竜に抵抗する現地レジスタンスの協力によって、ファヴルニールの唯一の弱点である肩の付け根についての情報と、その一点を貫くために竜鍛冶師たちが鍛えた2振りの剣を得た。なおこの剣は、かつてファヴルニールをあと一歩の所まで追い詰めたダークゾーンの英雄剣士の遺品であり、竜の血に染まった折れたる刃を2つの聖別された剣『グラム怒り』『グレイス恩恵』として鍛え直したものである。
 謹厳実直なロイヤルパラディン、グラムグレイスがこの時だけはあえて敵側に力を求めたのだ。
 故国と民の安全のために。

龍血伝承・閃耀不壊ニーヴェルン・リィンフォース!』
 ファヴルニールの恐怖のねぐらに一人潜入し、レジスタンスが設けた塹壕から、必殺の刃を放ったグラムグレイス。
 虚を突かれた──不意打ちもまたロイヤルパラディンとしては本来好まれぬ手の一つである──ファヴルニールは傷を負い退却。混乱の中、配下に命じ黄金を運び出させた。一説にこの手際の良さは、2振りの輝く剣をもった剣士が自分の命を狙う、という悪夢にファヴルニールが悩まされていたからだという。
 その後。
 支配者悪竜ファヴルニールを失ったこの地は、グラムグレイスの要請に応えた騎士団の増援によって占拠され、名をポルディーム大島だいとうと変えてケテルサンクチュアリ領となった。
 国の黎明期におけるこの快挙を民は喜び、その功績を称えられ、剣聖騎竜 グラムグレイスは剣聖騎竜団団長に任命された。

 だが、物語はここで終わらない。
 グラムグレイスは悪竜に深手を負わせた時、自らの名を名乗り、そして竜の血を全身に浴びた。
 ファヴルニールは、海峡の向こうの対岸に退く際、グラムグレイスにこう言ったのだ。
「いまこの時より我らは互いを宿敵と認めあった。これは終わりではなく始まりだ。貴様は我と黄金を追って、いつまでも戦い続けるであろう。誰も止めることはできぬ。同様に、この我も黄金を積み上げた“魔獄”において、失われし故地を夢に見続け、その奪還に生涯の残り全てを賭ける。貴様を憎み、騎士団を滅ぼし尽くすまでな」

 ……まさしく、あれこそが新たな“血の呪い”の始まりであった。
 グラムグレイスは最前線の陣幕の中で一人、身を起こした。
 未明の空はようやく明けかける黄金色の陽の気配が差し始めたばかり。
 そう。黄金は光であり、同時に影を生む。まるで海を挟んで対峙する我らのように。


Illust:瀬名まさき


 ──現在、天輪聖紀。ポルディーム大島だいとう最南端。
「ファヴルニール様」
 近習の翔刃の騎士 フェルンバエルが、主の動きに反応して側にひざまずく。
 その手にあるのは、ブーメランのように投げれば手元に戻ってくる投擲剣である。
 騎竜と共に空を翔るは、輝き瞬く蒼の剣。
 彼の戦評どおり、その輝きを見た敵は瞬く間に斃れる。
「準備はよいか」
「全軍、戦意は増すばかりでございます。グラムグレイス!ジーク勝利を!」
 グラムグレイス──今の姿は剣聖騎竜皇 グラムグレイス・ジーク──は、若き騎士の敬礼を鷹揚に受け、そして空を見上げた。
 海峡を渡る風の鳴る音、鳥の鳴き声が、かつて竜の血を浴びた司令官の耳に迫りくる戦いの刻を告げている。
 今日の衝突でまた相見えるだろう。
 我が宿敵、魔獄竜大帝 ファヴルニール・ラインゴルトと。
 いつ果てるともわからぬ国境をめぐる戦い。だが悔いはない。
 戦うことが騎士の使命。
 我が身に降りた呪いさえもまた、グラムグレイスが生きる意味なのだから。



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<ユニット紹介>

 剣聖騎竜 グラムグレイス
 :剣聖騎竜団団長。2手2足のコスモドラゴン。
  本編のサガにもある通り、無神紀中期には既に優れた騎士竜として名を馳せていた。
  建国したばかりのケテルサンクチュアリにおいて、隣接する脅威であり、
  民を脅かす元凶であるファヴルニールの存在を知ると
  当時ダークゾーン領だった通称「大魔竜島」に単身乗りこみ、悪竜を排除する方法を探る。
  無敵を誇ったファヴルニールに対抗するため、清廉潔白を旨とするロイヤルパラディンとしては珍しく
  毒をもって毒を制する(悪の力をもって悪を倒す)策を選ぶ。
  結果、ファヴルニールには深手を負わせ、後に合流した本土からの増援によって
  この地をポルディーム大島として、占拠することに成功する。
  ただその引き換えとして、悪竜の血を浴びたグラムグレイスは“血の呪い”とも呼ぶべき
  ファヴルニールと魔獄軍団との終わらない戦いを運命づけられた。


Illust:安達洋介


 剣聖騎竜皇 グラムグレイス・ジーク
 :長きに渡る魔獄軍団との戦いと、幾度も決着がつかないまま互いに痛手を負って終わる
  ファヴルニールとの対決の中、グラムグレイスがたゆまぬ努力と鍛練の末に得た新たな姿。
  その強さもさることながら、対ファヴルニール必殺技として
  『龍血伝承・閃耀乱舞ニーヴェルン・エンフォース
  を手に入れている。
  宿敵であり同じく進化をとげている魔獄竜大帝 ファヴルニール・ラインゴルトの
  『堕落黄金・黒血侵蝕オーバーライト・アンドヴァラナウト
  と激突する様は、ポルディーム水道における戦闘の華であり両軍がもっとも奮い立つ瞬間でもある。


 かつてファヴルニールのねぐらがあった荒野の空を舞っていたのが、グニダルヘイズ・キマイラ。
 →ユニットストーリー244「魔獄棘臣 ミルメス」<ユニット紹介>
 を参照のこと。

 剣聖騎竜団とその戦いについては
 →ユニットストーリー247「翔鋭の騎士 エアドフリス」
  ユニットストーリー248「翔勢の騎士 ウェルムンド」
 を参照のこと。

 魔獄竜帝 ファヴルニールと魔獄については
 →ユニットストーリー244「魔獄棘臣 ミルメス」
  ユニットストーリー245「魔獄闘臣 アルヴェリッヒ」
  ユニットストーリー246「魔獄竜帝 ファヴルニール」
 を参照のこと。

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本文:金子良馬
世界観監修:中村聡