009「リリカルモナステリオ」

Illust:四季まこと

はぁ～、『Astesice(アステサイス)』のライブ、盛り上がりましたね。師匠？
うむ。さて、我らは招待を受け、このリリカルモナステリオにやってきたわけだが……。
はい、ここでわたくし賢者の杖マクガフィンがリリカルモナステリオについて解説いたしましょう！
……マクガフィン、君っていつも元気でいいね。
だって今、わたくし達は空飛ぶクジラの背に乗っているのですよ、アリウス。惑星クレイ第6の国家リリカルモナステリオに逗留してのライブ鑑賞。ワクワクしたでしょう？
もう最高！
ダークステイツ国の至宝、知の探求者セルセーラと一行を指名で招いてくれるとは、さすがはリリカルモナステリオ。さらに学園で特別講義をする代わりに逗留中の経費もすべて向こう持ちとは客人への礼儀ともてなしも完璧だ。アリウスよ、おまえはこの私に仕えていることをようく感謝するのだぞ。
はい、心から感謝しておりまーす！（ところで師匠、学園の女の子たち相手に何の講義をするんだろう？）
さて、このリリカルモナステリオは空飛ぶクジラの上に建てられた学園都市です。旧ズーの大賢者ストイケイアの教えに共感した者たちが集まったことが始まりとされ、創始者はある偉大な人魚だとも言われています。
空飛ぶクジラに乗って世界を旅しようなんて、すごい事を思いついた人がいたんだね。
リリカルモナステリオが掲げるのは大賢者ストイケイアの説く「調和」の尊さ。そして学園で養成されたアイドルたちの歌と踊りによって、世界から失われつつある「希望」を蘇らせること。今ではこの学園で学び、アイドルとして活躍したい入学志望者が世界中からたくさん集まってきます。
うむ。尊ぶべき理念だ。いかにもストイケイア様のお考えらしい。
（また師匠、古代の大賢者様を知り合いのように……）
個人、グループともに沢山のアイドルが活躍しているリリカルモナステリオですが、今いち押しといえばトップアイドルの『Astesice(アステサイス)』、そして今度デビューを迎える注目の竜人（ドラゴロイド）ユニット『Earnescorrect(アニスコレクト)』ですね。
うん。次は『Earnescorrect(アニスコレクト)』のライブも観てみたいね。
最新アイドル事情のチェックも怠らんとはさすが賢者の杖。だが残念ながら、講義を終えたらすぐに次の寄港地で降りなければ。我々の知識探求の旅は果てしなく続く。人生、楽しい時は短いものだ。
寄港といえば、この空飛ぶクジラって海も泳ぎますよね。都市より大きなクジラの着水時の衝撃を物理科学で計算すると……気が遠くなるんですが。
普通は周囲に影響の少ないはるか沖で降り、港までは泳ぐのです。緊急降下の際にもクジラはきちんと穏やかに下りるそうですよ。リリカルモナステリオの空飛ぶクジラは、古より生き続けている偉大な生物ですから。
むっ。いまポツリと雨が降ってきたぞ。都市をおおう天蓋（ドーム）の中に雲が垂れこめるとは面妖な……。
あ、師匠。それは科学で証明できます！こうやってほら、透明な柔らかボトルにお湯とお香の煙を入れて強く押すでしょ。するとボトルが透明になり、手を離すとまた白くなりますね。押した状態が高気圧、つまり晴れです。逆に圧力が弱まると水蒸気がお香の煙＝空気中の塵と交わって雲になり、これがときに雨や雪を降らすんです。これを巨大にしたことがリリカルモナステリオの天蓋（ドーム）で起きているんですよ。
ちなみにリリカルモナステリオでは雲から生まれた内側雨（うちがわノあめ）、内側雪（うちがわノゆき）と呼ぶそうですね。
マクガフィンの解説は良かったが、貴様の得意顔にはむしょうに腹が立つな、アリウス。そんなお前には、こうだ！
師匠……なんで僕の頭の上にだけ雨雲を召喚したんですか。せっかく解説してあげたのに、僕だけずぶ濡れだなんて～……。

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