「ラディリナよ、ラディでいいわ」
ポニーテールの少女はそう名乗り、傍らで羽ばたく子ドラゴンを視線で示した。
「彼はモモッケ。あぁあと、あっちはロロワ」
モモッケが元気に「ピュイッ」と鳴き、思い出したように紹介されたロングヘアの少女・ロロワは控えめに首を傾けた。
それに応えて、
「わたし、ミチュ!」
とミチュは元気に挙手。
「……ノクノです」
とノクノは控えめな声で名乗ってから、泥棒猫と傘詐欺たちが向かった先を見た。
密度の高い人混みの中に二匹は紛れ、姿は見えなくなってしまっている。それでも必死にノクノが目を眇めていると、人混みの上へと飛びあがる黒い影が見えた。
あっ・かん・べー!
飛び上がった傘詐欺が、こちらに向かってにくたらしく舌を出した。
「……あったまきた」
ラディリナは瞳の炎をさらにメラメラと燃え上がらせながら、右手を左の脇の方へすばやく伸ばした。しかし右手は、スカッ、と何も無い宙を掴んだだけだった。
まるで本当ならあるべきもの——例えば剣だとか——がそこにないかのような仕草だ。
ラディリナは、チッ、と鋭い舌打ちをひとつして「ロロワ!」とムチのように声を飛ばす。
「あぁ!」
それに応えたロロワの声は少しハスキーだった。ジャジー な曲を歌ったら素敵かもしれない、聴いてみたいな、とノクノはそんな場合ではないのに思う。
ロロワは視線を走らせ、人混みの薄くなった広場の地面に目を止めた。そこには綺麗に刈られた芝生が広がっている。
ロロワはおもむろにしゃがみ込み、両手を地面に突いた。すると手のひらから鮮やかな緑色の光が溢れ、まるで水流のように地面へと流れていく。光を注がれたところから蔓状の植物がニョキニョキと芽吹き、伸びてきた。
これ、ロロワさんがしてるの ……?
ノクノが息を飲んでいると、不意にロロワがある一点を見つめて動きを止めた。芝生の上に立てられた看板だ。
『芝生を養生しています。火気厳禁! バーベキューなんてもってのほか! 皆様の協力をお願いいたします』
「あっ……」
ロロワは弱々しい声をあげ、手のひらの光は消えてしまう。今にも飛び出そうとしていた蔓植物も、しゅるるる……と地面に引っ込んでしまった。
残ったのはポコポコと穴の開いた芝生だ。
「ごめんね」
ロロワはしょんぼりと眉を下げて、穴を開けてしまった芝生をそっとと撫でた。
ラディリナはロロワの頭を殴った。ボカッ! とかなり派手な音がした。
「この馬鹿!」
「だ、だって芝が可哀想だろ!」
「あんたなら後でいくらでも生やせるでしょう!」
「そうだけど、でも、この芝が元通りに治るわけじゃない!」
ワーワー!
ギャースギャース!
ノクノと同じように内気に見えたロロワという少女だったが、強気そうなラディリナに怯まず言い返しているところを見ると、案外芯が強いらしい。
ラディリナにボカボカ殴られつつ(「痛いっ、痛っ!」「私だって痛いわよ、この石頭!」)、ロロワは芝の大地を手のひらでなぞって両目を瞑った。
「——だから、草木の目を借りる」
すぅ、と胸の奥まで息を吸いこみ、吐く。突風が起き、手入れされた芝をザァッと通っていく。
やがてロロワの長い髪は風を孕み、まるでアンスリウムの葉のように広がった。
新緑の生命力に満ちた瞳を開き、前を見据える。
「——見えた。1時の方向へ、13メートル」
ロロワが目ならばラディリナは耳なのだろうか。
「了解」
ラディリナは自らの耳朶を人差し指でトンと叩いて“聞こえる”と示し、そのまま強く地面を踏み込んだ。
——ゴウッ!
少女は真っ赤な一陣の風になり、人波の隙間を鋭く駆けていく。
しかし五感の鋭さと機動力ならばミチュだって負けちゃいない!
「わたしも行く行く!」
ハイッ! と挙手をして、猛烈にエンジンを噴かし、人波の上方へと飛びあがった。
赤とピンク、ふたつの風へと視線をやりながら、ロロワは的確に指示を飛ばしていく。
「ラディ、 2時の方へ前進!」
「ミチュさん、左方に展開しつつ、大きく回り込んで!」
“見えて”いるロロワの指示のもと、“聞こえる”ラディリナとミチュが泥棒猫と傘詐欺を追い込んでいく。
憎たらしく煽っていた二匹も、迫ってくる殺気と猛烈なエンジン音に、これはまずいと気づいたようだ。
「ニャッ?!」
「キョ、キョウッ?!」
もはや振り返ることすらできず、脚をくぐり、スカートをくぐり、ホットドッグ店の備品の上を駆け抜け、美術発表のキャンバスの隙間を通り抜ける。
ただの追いかけっこであれば、すばしっこい二人にとって負け無しのルートだが、彼らが踏んでいるのは青々と茂る芝。ロロワにはすべてが“見えて”いる!
「ラディ、あと7メートル!」
ロロワの指示に頷きを返し、身を低くしたラディリナは人々の足下を駆けていく。その姿はさながらドラゴンエンパイアに居るとされる妖怪カマイタチ、目にも止まらぬ早さだった。
「ミチュさん、わたあめ屋さんの方からUターン!」
「オッケー!」
対して上空を行くミチュは、泥棒猫たちの進む先の空中で待ち受けている。地上のラディリナ、空のミチュという隙のない布陣だった。
その大捕物に、広場でざわめいていた人々も、まどいながら左右に分かれ避けていく。
泥棒猫と傘詐欺の周りから人が引き——泥棒猫たちが無我夢中で人々の足の隙間を駆け抜けると、突然前がサッと開けた。
その前方頭上には、瞳孔をギュッと絞って二匹を見据え、今にも砲弾をぶっ放そうとしているミチュの姿が。
「——“装填”」
「……っ!」
二匹が慌てて引き返そうとすれば、背後には物騒に指をポキポキと鳴らしながら歩み寄ってくるラディリナと、業炎を吐かんと口を開くモモッケが。
「——ウェルダンでいきましょう、モモッケ」
「ピュイッ」
前後をこの上なく恐ろしい少女たちに囲まれ、二匹はもはやなすすべがない。
ここが年貢の納め時、万事休す。
砲弾に吹っ飛ばされ骨も残らないか、こんがりと焼かれウェルダンで頂かれるか……
「ニャ……」
「キョウ……」
二匹が絶望の声を漏らした、そのときだ。
「え——いっ!」
思い切った掛け声と共に、ラディリナの後ろから飛び出したのはノクノだった。
もう無我夢中だ。そのまま覆い被さるように泥棒猫に組み付いて、唐草模様のポーチを毟り取る。
勢いのままポーチを掲げると、はずみで破れた隙間から、盗まれた宝物がきらきらと飛び出した。その中でもひときわ色鮮やかに輝いているのは、花びらをかたどったバッジだ。
「ニャ……?!」
ウェルダンは覚悟したとしても、ノクノの登場は予想外だったのだろう。
泥棒猫と傘詐欺は呆気に取られ、ぽかんと口を開けながら宝物が舞い落ちるのを眺めている。
と、そこに勢いよく伸びてきたのは幾本もの蔓植物だった。一瞬にして二匹に巻きつき、きつく縛りあげる。
身体の自由を奪われた二匹はたまらず地面に倒れた。
「えっ……?」
ノクノが振り返れば、必死に走ってきた様子のロロワが、ぜいぜいと肩を上下させながら両手を地面(生真面目にも、そこはちょうど芝のない土の地面だ)に突いており、蔓が二匹に向かい伸びているのだった。
と、エンジン音を響かせてミチュが地上に降りてくる。ピョンと大きく飛び跳ねてノクノの胸に抱きついた。
「ノクノ、やったぁ!」
「わ、わっ……!」
バランスを崩したノクノはそのまま後ろにひっくり返った。
「も、もう……」
頬ずりしてくるミチュにノクノは微苦笑をこぼし、そのまま堪えきれずに噴き出してしまった。
風紀委員長のサジッタは、長い睫毛で風を切りながら、ビシリと折り目正しい礼をした。
「ご協力ありがとうございました!」
捕らえられた泥棒猫と傘詐欺は、蔓に縛られたままサジッタの足元に転がっている。ニャア……キョウ……と鳴きいかにも哀れを誘う姿だが、それこそが仮の姿だと知れた今、わざとらしいことこの上なかった。
横に並んだ四人はサジッタに心からの感謝を向けられ、ミチュは誇らしげに胸を張り、ノクノは気恥ずかしそうにしつつもこっそり喜びを噛みしめる。平静を装っているが、ラディリナの口角にも笑みが浮かんでおり、前で組んだ手はモジモジとしていた。
どうやら浮かれていないのはロロワだけのようだ。誠実そうな横顔には、気遣わしげな表情が浮かんでいる。
「彼らはどうなるんですか?」
とロロワが訊ねると、サジッタは「えぇ」とひとつ頷いた。
「一旦生徒会に持ち帰り処遇を委ねます。場合によっては次の寄港地で警察に引き渡すことになるかと」
「そう、ですか……」
ロロワは開きかけた口を物言いたげに閉じた。
それに気づかないサジッタは、息一つ切らしていないラディリナへと憧憬の混じった視線を向ける。
「それにしても、あなたの身のこなしは素晴らしかった」
「……!」
憧れのアイドルから手放しで褒められ、ラディリナの頬は瞬く間に薔薇色に上気する。引き結んだ唇はほころび、今にもデレデレと締まりなく笑い出しそうだ。
「そ、そうかしら……?」
「えぇ、私もパフォーマンスにはこだわりがありますから、生半可な努力の結果ではないことはわかります。アイドルというよりも……そう、まるで歴戦の戦士のようでした」
ラディリナは「やったっ!」と小さくガッツポーズして、モモッケも鼻孔を自慢げに膨らませる。やがて堪えきれなくなったラディリナは口を開き、
「そうね、だって私は誇り高き——」
「……っ!」
そこまで言いかけたラディリナの脇をロロワは慌てて肘でつついた。ラディリナもハッして咳払いをひとつ。
「ご、ごほんっ……誇り高きアイドル志望なんだから」
「ふむ……?」
サジッタはロロワとラディリナの胸に輝くフェスバッジの存在に気づいた。泥棒猫たちから取り戻したものだった。
「なるほど、お二人はブルーム・フェスのためにいらしたんですね。一般予選は大変だったでしょう」
サジッタが言う一般予選とは、ブルーム・フェス出場を希望する一般参加者に対して行われるものだ。
文化祭一日目に行われている予選の内容は簡単な面接とダンス、歌の披露というものだが、残るのは十分の一ほど。物見遊山や記念受験気分で申し込む一般参加者はふるい落とされている。
「優勝するつもりだもの。あんなのは通過点よ」
ラディリナは曇りの無い瞳で言い放ち、モモッケも鼻孔から小さな炎を吐いている。
「それは楽しみですね。応援しています」
「“Absolute zero”のサジッタが私を応援……!」
「ちょっと、ら、ラディ……」
感激するラディリナに対し、ロロワは恐縮して肩を縮こまらせ、期待に満ちたサジッタの視線から逃れるように俯いた——が。
事態に気づいて目を見開く。
「え……っ?!」
サジッタの足元で転がっていたはずの泥棒猫と傘詐欺の姿が忽然と消え失せていた。
「えぇええぇぇ!?」
あたりは騒然とした。
「ど、どこどこ?!」
ノクノは辺りをキョロキョロ見渡し、ミチュとサジッタは周囲を飛び回ったものの二匹の姿は跡形も無い。
ネコもカササギもゴーストではないはずだから……逃げてしまったのだろう。
「ム——!」
「ミチュ!」
二匹がどこに行ったのか、見当もつかないまま走りだそうとするミチュを、ノクノは手で制止した。
「ブルーム・フェス、始まっちゃうよ!」
時間がない。さすがにまた追いかけっこをすることはできなかった。
「うぅ……」
サジッタは両足を生真面目に揃え、素早く一礼をした。
「くっ……自分は奴らを追います! お二組の健闘を祈ります!」
サジッタはパッと身を翻し、再び人でごった返している大通りの方へと駆けていった。
その背中が小さくなっていく中、ラディリナは斬るような視線をロロワへと向ける。
「ロロワ、あの泥棒猫と傘詐欺……」
ぎくっ! とロロワの肩が大きく跳ねた。
「足の蔓が緩かったわ。あなた、わざと逃がしたでしょう」
「ぴゅう~」
ロロワは口笛を吹きつつ、わざとらしくラディリナから視線を逸らした。やがてぼそぼそと言う。
「……手はクレチマスでキツく縛ったから、しばらく悪さはできないと思うんだけど……」
「そういうこと言ってるわけじゃないのよ」
ラディリナは手を思い切り振り上げて、ロロワの薄い尻を思いっきり叩いた。
「いったぁ!」
尻を押さえて飛び上がるロロワの姿を見つつ、ノクノはこぶしで胸を押さえつつ頷いていた。無意識にしてしまったその行動で、ノクノは二匹が逃げたと聞いてほっとしている自分に気づく。
もちろん、悪いことをした子がちゃんと怒られることは大切だけれど、ノクノが捕まえたことがきっかけで二匹が刑務所に入ってしまったら……想像するだけで、胸がざわざわしてしまう。
やや剣呑になったロロワとラディリナの空気を断つように、ノクノはひとつ手を打った。
「二人もブルーム・フェスに出るんだよね? もう行かないと」
「あぁ、そのつもり……だったんだけど……」
ロロワは声を消沈させながら、視線を自分とラディリナの服へと向けた。
ラディリナが纏っているのは、牡丹総柄の綿生地で仕立てられた炎色のワンピースだった。
ドラゴンを伴っていることから察するに、きっとドラゴンエンパイアの出身なのだろう。襟元や袖元で揺れる組紐飾りが、ノクノには異国的で新鮮に感じられた。
それに比べてロロワが着ているのはずいぶんとシンプルなものだった。若草色のカジュアルなリネンワンピースで、飾りといえば袖に気持ちばかりのリボンレースがあるきり。丈も膝下までと長く、身体のラインを拾わないシルエットになっている。
清楚な雰囲気のロロワによく似合うそれは、泥棒猫たちを追いかけたせいで袖や裾が破れてしまっていた。
沈むロロワの表情に、ミチュはハッとする。
「あわわ……もしかして……」
「うん、この服しかないんだ。さすがにこの状態で出るのは、ね」
ラディリナは眉間にしわを寄せる。
「どこか開いている服屋はないかしら」
ミチュはムムムと考え込み、
「うぅーん、今日街の人はみんなお休みかも……」
リリカルモナステリオの市街部には沢山のブティックがあるけれど、そのほとんどは文化祭のため臨時休業にしてしまっているだろう。
学園内の洋裁室も今日はもちろんお休みだった
「まぁ、しょうがないよ。今回のフェスは諦めよう、ラディ。ね、そうしよう!」
そう言うロロワは、不思議なことにどこか期待に満ちたまなざしをしていた。
「……そうするしかないようね」
「ピュイ……」
ラディリナとモモッケは火が消えてしまったようにうなだれた。
ミチュも二人に負けないほど眉をハの字に下げる。
「そんなぁ……どうにかならないかなぁ……」
ミチュはちょっと考えみ、ハッとして顔を上げ、勢いよくノクノの方を見た。
「そうだ! ね、ね、ノクノ! あれ着てもらおうよ!」
「——うん」
ミチュの言わんとすることを察してノクノも頷く。ラディリナとロロワを交互に見つめ、ぶつぶつと呟いた。
「ラディさんは大丈夫。ロロワさんは私たちよりも背が高いから、私のだと少しスカート丈が短くなっちゃうかもしれないけど……うん、いけると思う」
「やったぁ! うんうん、ロロワはスレンダーだからきっとミニスカートも似合うよ!」
ロロワは、二人の盛り上がりについていけないまま、ただただ呆然としていた。
「え……? え……?」
間もなくブルーム・フェスが始まる。
学園エリアを縦断する石畳の大通りを、期待に胸を踊らせた人々は連れだって『スプリング・ドーム』へと向かっていた。
『スプリング・ドームはあちらです。スプリング・ドームはあちらです。お急ぎください、お急ぎください』
アナウンスをしながらふよふよと浮かんでいるのは、監視カメラを兼ねた無人機だった。文化祭仕様でリボンをつけたそれは、胸を弾ませる群衆をゆっくりと見渡しながら、ふよふよと通り過ぎていく。
浮足立つ人々の中に、リリカルモナステリオの職員に導かれ歩く、薄暮色の番傘を差した妖狐の姿があった。
「——……」
ふとわけもなく胸騒ぎを覚えたタマユラが顔を上げると、しゃら、と帯留めがささめいた。
しかし、いくらあたりを見渡しても目をキラキラと輝かせた人、人、人の顔があるだけで、胸騒ぎの原因になるようなものは一向に見当たらない。
タマユラはか細い息を吐く。
「気のせい、でしょうか……」
するとそのとき、道行く人々の中で、不安げに交わされる言葉がひとつ、ふたつ。
「あっちの広場の方でネコと鳥のスリが出たんだって……」
「こ、怖い。もう捕まったかな」
それを耳に留めたタマユラは、たおやかな指を口元にやって慄いた。
「まぁ、スリが……」
タマユラは番傘を傾け、二歩後ろをついてくる双子人形へと声をかける。
「気をつけなくていけませんね。だいじょうぶ、わたくしが居ますからふたりは何の心配もいりませんよ」
『ありがとうございます、タマユラ様』
ぴったりと声を重ねながら、姉のリリミはドレスの裾を、弟のララミはジャケットのテイルをふわりと広げた。
小柄で幼びた二人の姿は、深窓の令嬢の遊び相手の磁器人形にしか見えないことだろう。愛らしくいじらしい愛玩人形にしか見えないことだろう。
だから、そう。
リリミがドレスの内に秘めたフープに誰も気づかない。
ララミがジャケットの内に秘めたジャグリング・ピンに誰も気づかない。
三人からほんの僅か離れた花壇の中で、一匹のネコと一匹のカササギが死んでいることに、誰も、気づかない。
巨大な『スプリング・ドーム』には、一万人近い観衆が詰めかけ、爆発寸前の熱気が満ちていた。
それを華やかに彩るように音楽隊によるファンファーレが鳴り響き、キーンとマイクのハウリングがあって、正面の巨大モニターに女の姿が映る。
星空色のローブを纏った彼女は、傍若無人な佇まいで白い歯を見せながらマイクを握っていた。
『トゥインクル・トゥインクル~☆ さぁて始まりました、ブルーム・フェス! 解説はこれ以上の適任はいないでしょう、泣く子も黙らず大笑い、ご存じワタクシ“星灯りの指揮者ステリィ”と!』
カメラが横にパンして、映ったのは後光冠を戴いたデーモンの男だった。
『カオスカオス~☆ このたびはお招きいただきありがとう!』
ケイオスが人好きのする笑みを浮かべながら、カメラに向かってひらひらと手を振っていた。